差別化するのは結果ではなく付加価値
吉川さんの「私にしかできない仕事というのは組織では幻想」を読んで、ちょっと思い出したことがありました。
以前勤めていた会社に、尊敬する方がいらっしゃいます。その方がよく言っていたのが「付加価値を出せ」というセリフでした。仕事は結果を出してあたりまえ、付加価値を出してこそ、自分の存在意義が生まれる -- という意味です。
例えばかつての同僚に、常に完璧な資料を作る女性がいました。もちろん資料作り「だけ」に勢力を傾けるのではなく、全ての仕事をこなした上で、その報告やプレゼン用の資料を見やすく・分かりやすく仕上げるのです。そんな丁寧な仕事をする部分が評価され、「次のプロジェクトには彼女を呼びたい」というマネージャーが増えたために、彼女は自分の望むキャリアを選べるようになっていきました。
「付加価値」という言葉から連想されるものとはズレているかもしれませんが、彼女の「資料を完璧に仕上げる」というのも、立派な付加価値です。議事録や報告資料を作るというのは、それこそ「私にしかできない仕事」の対極にあるタスクで、誰がやってもできる(できなければならない)仕事でしょう。しかし彼女はそこに「見やすい・分かりやすい」というプラスアルファを付けることで、自分の存在を差別化することに成功したわけです。
人間は自分の存在意義を確認したくなるものですから、「自分にしかできない仕事をしたい」という気持ちになるのはある意味当然だと思います。しかしそれが仕事の「結果」に向かってしまうと、吉川さんの仰る通り、組織の中では幻想を追い求めることになってしまうでしょう。そこで「結果」ではなく「付加価値」で差別化することによって、組織の一員としての役目を果たすと共に、自分でなければならないという存在意義も見出せるのではないかと思います。
しかし付加価値を出すのって、実は人と違う仕事をする以上に難しいことだったりするんですよね。他人と違うことをしている限りは「いや、これが精一杯だから」と言い訳できるわけですから、ある意味「自分にしかできない仕事をしたい」というのは逃げなのではないかと思います。さて、今日はどんな価値を出すことができたのやら・・・。