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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

私にしかできない仕事というのは組織では幻想

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 3連休なのに特に予定もなかったのでネットをブラブラしていたらはてブのホッテントリ(最近の人気エントリー)のトップに城繁幸さんの本「 若者はなぜ3年で辞めるのか?」について書いたブログが出ていたのを見かけ、 早速本屋に行って買ってきて読んでみた。
 城繁幸さんといえば元富士通で「成果主義」に関する本を出していることは知っていたが著書を読んだのはこれが初めてである。全般的にこの本で書かれている企業内での事象や例示、そこから導きだされている仮設や主張には非常に納得感があり素直に入ってきた。この本の中でも“答え教えて症候群”に類似する話が出てきたのには苦笑してしまったが。
 結論として若者各個人に“働く理由”と“やりたい仕事”を見つめなおしてまずは「声を上げよ」というお言葉にも全面的に賛同。若手社員は大いに見つめなおして声を上げて欲しい。「自分たちは、会社に配属された部署で指示されたとおりのことをやってきた。その結果、気がついたら、社内では必要の無い技術者になっていた。」なんてことになる前に。但し、その際にちょっとだけ思い出したことがあるので書いてみることにした。

 私のところには「将来コンサルタントになりたい」とか「希望の部署で仕事をやりたい」といってキャリアの相談にくる後輩が時々いる。そういう彼らに「やりたい仕事」を聞くと「私にしかできない仕事をやりたい」と答えることがある。かくいう私自身もそうだった。そしてその理由で会社を辞めていく後輩も何度か見ている。
 ところがこの「私にしかできない仕事」という希望は結構曲者である。実のところ企業や組織というものは「誰がやっても仕事の結果や内容が同じ品質になる」ということを目標の一つにしているものだ。考えてみれば当たり前で、ある人が辞めたから注文を受け付けられないとか、ある人が風邪で休暇を取ったからといって製品の品質が落ちたなんてことがあっては困るのである。
 もちろん特定の人にしか出来ない仕事がまったく無いわけではない。でもそれはどこの組織にも少数しかない。大半の社員がマックの店員と同じレベルの仕事しかしなくて膨大な利潤を生み出す仕組みを考えるのは、ビジネスモデルを構築する仕事でありこれは誰にでもできる仕事ではないが、こんなポジションはどこの企業にもほとんどない。

 この本の一節には「日本企業でのキャリアは本質的にはマックのバイトと同じ」という痛切なコメントがあるが、これは日本企業に限ったことではないと思う。残念ながら私は日本企業にしか勤務したことが無いので想像の範囲でしかないが、外資系企業でもパーツとしての役割しか与えられない社員の方が大半だと推測している。日系とか外資系とかいう問題ではないと思う。
 それでは事業会社(部門)ではなくコンサルティング会社(部門)であれば「私にしかできない仕事」ができるのだろうか、残念ながらコンサルティング会社もやはり組織である。実業会社よりはチャンスは多いと思うがやはりそれは少数派である。
 結論として「私にしかできない仕事」という答えでは環境を変えてもチャンスはあまり増えない。もうちょっと掘り下げて考えて欲しい。この答えしか出ないようであればまずは今の環境でもうちょっと知恵を使うなり工夫をするなりすることを薦めたい。

 この本の中でも城さんは諸手をあげて転職を勧めているわけではない。まずは“我慢”することなく「声を上げろ」と書かれている。この声を上げるときに上に書いた話をちょっと考えてみてはどうか。多分この本を読むのは20代から30代前半の若い会社員だと思うが、これが若干先輩にあたる私からのアドバイスである。

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