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IT技術者教育に携わって25年が経ちました。その間、変わったことも、変わらなかったこともあります。ここでは、IT業界の現状や昔話やこれから起きそうなこと、エンジニアの仕事や生活について、なるべく「私」の視点で紹介していきます。

Web 2.1「強制CGM」~サバイバルオーディションの増えるわけ~中野杏の場合

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ここのところ、週末が少々忙しかったため、前回のエントリから1ヶ月以上たってしまった。忙しい理由は、来月半ばには告知できるはずなので、その時に改めて書いてみたい。

もっとも、忙しいといってもまなみのりさのライブにも行くし、宮崎奈穂子のライブにも行っているわけで、炎上したITプロジェクトのメンバーに比べればむしろ暇なくらいである。しかも、まなみのりさのライブ会場でスタッフをしていた女性(中野杏)が実は同じ事務所のタレントで「サバイバルオーディション」に出るというので、いくつかのイベントに参加したくらいだ。

 

サバイバルオーディション

通常のオーディションは、候補者と審査員だけで行われる。また、何段階かの審査があったとしても、その場限りのものである。これに対して「サバイバルオーディション」は、候補者がファンにどれだけアピールするかを、数週間にわたって競う。もっと端的に言うと、集客力と集金力を競う。アイドル系のイベントに多く採用されるのは、ファンがお金を落としやすいということだろうか。

たとえば、前述の中野杏さんがエントリ中の「ミスFLASH 2016」では以下のポイントが加算される。

  • Web投票…無料、1日1票
  • Showroom閲覧…DeNAが提供するWeb動画配信の視聴、無料(アイテム課金あり)
  • ネット生放送…有料動画配信
  • 撮影会…有料写真撮影会

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▲撮影会にも行ってみた

 

Showroomについて

最近多いのがShorwoomの利用で、これだけで運営するイベントもある。実際、Showroomはよく考えられていて、最近のサバイバルオーディションの集大成と言える。オルタナティブ・ブログの読者の方は、この種のイベントには縁がないかもしれないが、現代的なマーケティング手法として知っておいて損はないはずだ。

まず、Showroomを閲覧するだけなら何の準備もいらない。第1段階としては非常にハードルの低いサービスである。

配信の閲覧中には、「星」を投げて配信者を「応援」できる。「星」は一定量が無償提供されるが、使用量が個人単位で管理されるため、「星」を使うにはShowroomにアカウントが必要になる。これで第2段階に入る。アカウントはTwitter、Facenook、独自アカウントの3種類から選べるが、Twitterとの連携を考えるとTwitterアカウントで登録するのが一番簡単だ。

「星」は、Showroomのコンテンツを見ると一定量が与えられる。閲覧中に、専用ボタンを使ってTwitterで宣伝すると追加の「星」が得られるため、利用者は自発的に宣伝することになる。獲得した「星」は誰の配信でも使えるため、特に興味のない人でも配信を見るモチベーションとなる。ただし、「星」を獲得するには一定の時間見る必要がある。この数分間で、出演者が魅力的なコンテンツを提供すればファンを獲得できる。そのため、出演者のモチベーションも保たれるし、閲覧者は「星を取りに行くためだけに見る」という後ろめたさを感じる必要もない。放送中のテレビ番組を次々切り換える「ザッピング」と同じ行為だからだ。

「星」の1日の獲得量には制限があるため、毎日継続的に収集する必要がある。こうしてShowroomは継続的な利用者を獲得することに成功する。

配信中に閲覧者が行うコメントは、1コメントにつき「星」1つに換算される(ただし50コメント以上は「星」に加算されない)。コメントを書くことで、配信が盛り上がると同時に、配信者の応援にもなる。もっとも、システムはコメント内容が分からないので、「1、2、3、...」とカウントしながらコメントする人が非常に多い。

無料アイテムである「星」での応援で物足りない場合はポイント制の有料課金アイテムが用意されている。これが第3段階である。ポイントの購入は540円が最小だが、アイテムそのものは1円から存在する(最高は1万円である)。ときにはファン同士の課金アイテムがエスカレートすることもある。主催者の思うツボであるが、有料課金アイテムのいくらかは配信者に還元されるため、ファンの抵抗は少ないだろう。

有料課金アイテムを使った人は、配信者にまとめて通知される。多くの配信者は、有料課金アイテムを使った人にお礼のメッセージや限定写真などを配布している。個人的なメッセージが来れば、ファンとしてはうれしいだろう。こうして有料課金アイテムの購入がエスカレートする。

このようにShowroomは、アカウント不要の第1段階、無料アイテムのみの第2段階、有料アイテムを使う第3段階でステップアップしていく。フリーミアムの典型的なスタイルである。

 

有料課金のインセンティブ

ミスFLASHのWeb投票では、有料会員と無料会員があり、有料会員は無料会員の5倍のポイントを投じることができる。また、FacebookやTwitterでの共有もポイントになるが、こちらも有料会員は5倍のポイントを持つ。

有料会員の会費は月額324円、サバイバルオーディションの多くが1ヶ月から半年以内であることを考えると、2000円以内の出費で5人分の投票ができることになる。ファンとしては無理な金額ではないだろう。

 

Web 2.1

ブログなど、消費者が自発的にコンテンツを提供するシステムを「Web 2.0」と呼んだ。サバイバルオーディションでは、ポイントのインセンティブによるTwitter発言の誘導などが多用され、半ば強制的にコンテンツを提供させられる。いわば「Web 2.1」である。

一部の利用者は、半強制的な仕組みを自分のブログやTwitterの発言と関連づけることで、さらに広い範囲に情報を発信している。もともと「ファン」は、好きな人を広く世界に広めたいと思っているものである(「日本人の心は「わび・さび」から「萌え・推し」へ」も参照して欲しい)単に利用されるだけでなく、うまくシステムを利用して「推し」を広めたいものである。

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