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「経験あり」の嘘

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プロジェクトでいろいろな人とお仕事をしていて、一番感じることは「xx業務の経験はあります」という触れ込みで参画する人の、知識・スキル・経験の無さです。私もいろいろなことに関して、そんなに経験豊富なわけではありませんが、明らかに「経験していないでしょう」と思う人が”経験者”としてやってきます。

何度も同じことが重なった結果行き着いたひとつの結論は、”経験有り”の定義が異なるということです。経験有りは、以下の定義のいずれかだと想定して、人材のレジュメを確認していました。

  • ある業務(仕事)を自ら実施したことがある
  • ある業務の責任者として、他人(または他社の業務)をすべて把握して管理したことがある
  • 構築・実施はしていないが、特定業務の設計文書やマニュアルの作成を自らしたことがある

しかし、実際には下請けベンダにすべての作業をさせており、ベンダの報告を聞き、とおりいっぺんのドキュメントレビューを行っただけ、というパターンが非常に多いです。その結果、業務の内容を理解していないだけでなく、基本的な知識、さらにはリスクや問題点の把握ができないことが多く発生します。

業務の”経験あり”とアピールするのであれば、自ら実施はしないまでも業務の知識・ノウハウは吸収しているべきだと思います。そうでない限り、これからの業務でも、基本は実行するベンダの言いなり、そしてリスクも課題も管理できない状況が続くはずです。

”経験あり”はベンダにやらせた経験ではなく、ベンダを管理するに十分な実務経験を持っていることです。安易にレジュメを信じず、その人材が実際に行った仕事の内容を確認することが唯一の防衛策だと感じます。

特に大手企業と仕事をするときは気をつけましょう。中小企業では経歴詐称に近い状態で、「xxxをやっていました」、「xxxは経験あります」ということが平気で書かれていますが、実際には「ベンダがやっているプロジェクトに参画していただけ」という人が、結構な確率で表舞台に投入されます(すべての大手ベンダでは無いです、念のために)。

Comment(10)

コメント

それはもう、下請けが生き延びる一種の必要悪でして。肯定するつもりは無いですが、業界全体の元請け->下請け(そのさらに下)という構図をどこかで突破しない限り、常に出てくる問題です。下請けからすると、とにかく飲み込むように「はい」と首を縦に振らないと、仕事を切られる恐怖もあるわけで。どうしたらいいんですかね。

以前私も「出来ないことは出来ないといってくれ!」というエントリーでも書いたのですが、IT業界には経歴に留まらず嘘をつくベンダーさんがまだまだ非常に多いですね。
 そして一番納得がいかないのは、迷惑は嘘をついた本人ではなく周りが受け尻拭いさせられることです。なんとかしたいこの慣習。

>ゆきちさん
すみません言葉足らずですね。どちらかと言えば元請が自社の人材で”経験有り”と言って、その作業の尻拭いを下請けがする場合を想定して書いていました。確かに下請けの場合には、投資ができない分どこかで背伸びが必要になると思います。下請けの場合には、他に責任転嫁できないわけですし、NGであれば次回が無いわけなので、元請とは事情が違うと思います。下請けの場合には「直接の経験は無いけれど、xxxでxxxをしていたので援用できる、類推できると思う」と正攻法で行くか、「はい、経験あります」と言って、仕事の中でキャッチアップするしか、現実的な選択肢はないと思います。
僕もそういう意味では下請けでも作業することも多いですので、どうにかしたい悪循環だと思います。

>Yoshikawaさん
ゆきちさんへの返信でも書きましたが、現実に発生していることで一番大変なのは、下請けでなく、元請の嘘をカバーする下請けだと思います。酷い場合には、お客様が尻拭いということがありますが、殆どは元請の怠慢が原因だと思います。
こちらも、どうにかしたい悪慣習ですよね…

みちい

私の経験では、派遣の場合、仕事を取ることが優先で、経験なくとも経験あり、また学歴詐称も非常に多いです。英語を使った仕事の経験がなくとも留学すら経験がないのに、インターンシップ1年と記述される始末。
大手なり中小なり同様でした。

あ、なるほど、失礼しました。元請の立場に立ったことがないので(苦笑)、そういう苦労が読み取れないのですが、まあ、業界構造というか、苦労の中身を替えていかないと、どこも難しいですね。

なるほど。興味深く読みました。
むしろひと昔前は、仕事経験があるのに「いえ、あまり経験はないです」と謙遜する人が多かったような気がするのですが、それを古きよき日本と言ってしまうのもまた違うのでしょう(笑)女性が「経験ないわ」と言うのもまた別の話でした(下らなくてすみません)

私の経験(採用)では、エンジニア“個人”は、背伸びした発言をする人は少なかったです。
むしろ、もっとアピールしてもいいのに、と歯がゆくなる人ばかり。
たぶん、「出来ないこと」を「出来る」といってプロジェクトに入っても苦労するのは自分自身だからでしょうね。
個人は謙虚なのに、営業とかの関係で勝手に尾ひれがついてしまって、経験者扱いされる本人も困っているのではないかしら。

>ばんちょ~さん
”相手にも見える背伸び”は重要ですよね。でも”シークレットブーツ”のように、後で騙されたと言われるやり方はNGだと思います。そういった意味で、つま先立ちでもいいので、背伸びする姿勢は見せるべきだと思います。

>ふるさん
”謙虚さ”や”謙遜する”ということも古きよき時代のことなんですかね…これだけ情報網が発達していると、本来仕事上のプロフィールや実績はもっと見えるようになり、”謙遜の影で周りの人間がその人の能力を推薦する”という文化の代替になるかとも期待していましたが(個人情報保護とかあって、面倒ですね)。

>みちいさん、ゆきちさん
そうですね、皆さん苦労されてますし、個人の問題だけでなく、構造の問題となりつつありますね。

個人的には、まったくのクローズ・サイトで、お客様の評価による人物照会の仕組みを作ろうかとも思っています。いろいろ反対されていますが、やってみたい試みでもあります。ご興味のあるかた、一緒にアイデア練ってみませんか?営利目的にはならないと思いますが。

例えば、八百屋で野菜を選ぶのと比べてみてはどうでしょう?
八百屋のオヤジの「これは新鮮だよ~」って言葉を信じて失敗する人や、自分でどの野菜が新鮮か判断して賢く買い物する人がいます。いつまでもオヤジの売り言葉の通り買い物していれば、いつも同じ失敗を繰り返すってことだ。
どの野菜が新鮮なのか比べるのと、どの人がほんとに使えるのか見極めるのでは難しさに違いはあるけどね。
でも、本当の問題は、技術者を野菜と同じように”もの”として売り込むような企業の体質(業界の体質?)だと思いますが。
こんな会社ばかりだと、技術者はいつまでたっても野菜レベルを抜け出せないね。

「八百屋の親父さんに、いい野菜を優先的にもらうためには、八百屋さんの常連・上顧客にならないとダメ」と考えると、いいたとえですね。魚屋さんだと、「死んだサバの目をした人を派遣されてしまう」といったところでしょうか。
どちらにしても、ご指摘のように、人月の帳尻を合わせて、きちんと請求していくことが目的となっている、業界の体質=人を野菜として売る体質が根本原因ではありますね。

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