NEDOの起業支援は、かつての「マネーの虎」となりえるか?
今週のニュースで非常に気になるものがある。
NEDO(独立行政法人 新エネルギー、産業技術総合開発機構)が、製造業系などの研究開発型ベンチャー企業向けの起業家支援プログラムを開始した。
「日本では、ベンチャーキャピタル、大企業、インキュベーター等から構築されるベンチャーエコシステムが未発達であることから、優れたシーズ技術が存在しても、それらを起業に結びつけ、成功まで導くに至らないケースが数多くあります。また、新たな価値創造は多くの失敗の上に成り立つ、という社会的コンセンサスが得られていないことなどから起業家精神が育たず、ベンチャー企業の興隆が見られません。特に製造業系のベンチャー企業については、技術とビジネスモデルとをマッチさせる優れた起業家がそもそも非常に少ない状況にあります。
このためNEDOは、日本のベンチャーエコシステムで不足している研究開発型ベンチャーへのシード資金供給システムの構築を図りつつ、起業家候補を育成し、成功事例を創出するために、「研究開発型ベンチャー支援プラットフォーム」を立ち上げることと致しました。今般、その最初の支援策として、技術シーズをもとに起業を志す方(スタートアップイノベーター:個人または2-3名のチーム)向けプログラムの公募を開始したところです。
この公募で採択されるスタートアップイノベーターに対しては、事業化を支援する専門人材(事業カタライザー)を担当として配し、ビジネスプラン作成の指導・助言を行うほか、一人あたり650万円/年を上限とした人件費、一チームあたり1,500万円/年を上限とした活動費(試作品製作、市場調査等)を最大2年間支援します。また、新事業の買い手・投資元となる大企業・金融機関・ベンチャーキャピタル等に対してビジネスプランのプレゼンテーションを行い、マッチングを図るための発表会(デモ・デイ)の機会も提供します。」
つまり、技術系のベンチャーには一人当たり年間650万円、事業費も1500万円、最大2年にわたり助成されるということだ。
これをみて、私は真っ先に10年ほど前に話題となったあるテレビ番組を思い出した。
日本テレビ系で放送されていた「マネーの虎」である。
殺風景な会議室のなかで、ビジネスアイデアに出資を望む志願者がプレゼンを行い、それを「虎」と言われる、当時急成長していたベンチャー企業の社長たちが判断して、出資するかを決めるという番組だった。
およそ、テレビ番組とは思えない会議室でのプレゼンと、志願者に容赦なく浴びせられる質問、失跡の嵐は、当時大きな話題を呼び、0時50分という深夜枠にもかかわらず、視聴率7%を記録し、ゴールデンタイムに昇格したのだ。ゴールデンタイムになってからは、どぎつさが少々薄まり、低視聴率で結局はその後2年で終了した。
当時「虎」として登場していたのは、美空ひばりの養子である加藤和也氏や、アダルトビデオメーカーで年商100億を挙げていた高橋がなり氏、不動産ビジネスで急成長していたノシアスリゾートの上野社長、ホームレスから這い上がり、リサイクルショップで年商100億を超えた堀之内究一郎氏などだった。
その後の「虎」たちの行く末を調べてみると、ほとんどが失敗し破産している。企業のうち20年後に残っているのは10%と言われるとおりである。
逆に出資をしてもらった志願者たちはどうなったのか?パソコン救急隊というPCの応急処置サービスの会社は順調に伸びているし、世界一おいしいパスタ屋を開きたいとオープンした店は今では3店舗展開となっている。また、フランス風のクレープを広めたいというロコロールは大成功となった。
もちろん、テレビ番組の企画と今回のNEDOの助成事業を比べるには無理がある。
しかし、安倍総理の、日本経済を復活させようという気持ちは、本気だ。
そもそも、このような助成の案が出てくることだけでも、政府は変わったことが十分うかがえる。
日本の企業は他の先進国が軒並み年10%を超えるのに比べ、5%程度と低い。技術大国という割には意外である。
今回は、技術系のベンチャーへの助成ではあるが、「マネーの虎」では、アイドルの等身大の抱き枕など、その後ほかの企業が取り組み一般的になったものもある。
他のベンチャー助成を見ると、最大700万円である。しかも、生活費は自腹であった。その点、今回の企業家の生活資金に年650万円、事業費に年1500万円というのは、かなり思い切ったことをしたものだと思う。
これがアベノミクスの「矢」の一つだと考えると、大賛成である。これからも安倍政権には、斬新なアイデアをもっともっと出してもらいたい。