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夏目房之介の「で?」

川勝徳重編『現代マンガ選集 恐怖と奇想』ちくま文庫

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前にも紹介してますが、じつは読了してませんでした。現代マンガ選集は全部で8冊刊行予定で、これは7冊目。編者川勝徳重は、じつはうちの卒業者ですが、一言でいえば変人です(僕がいうのも何ですが)。そして、このシリーズの中でも、この本は飛びぬけて「変」で面白い。マンガ読みにとって意外性に富み楽しめます。「絵物語」で有名な山川惣次の『骨の兵隊さん 指輪』(1970)はなかなか珍しい山川版「劇画」ですが、編者の選択眼の特異さを感じます。同じく絵物語作家だった小松崎茂『関東大震災』(75年)も同様で異様な迫力が。丸尾末広『無抵抗都市』(93年)は284頁と、文庫選集のバランスを失してますが松尾作品としてまごうことなき傑作。そして、川勝の解説がまた面白い。この種の選集の「作法」を意に介さず「恐怖と奇想」マンガの特性を説き、「街頭紙芝居」と「戦後」を基準に特異な選となった説明の後紹介される作家たちは、文庫に収録されていない、かなりマニアックな人選。ある種やりたい放題の突破力を感じる選集です。どの程度売れてくれるか、できれば知りたいところです。今後の川勝の活躍を期待します。
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