2020年5月29日 森鴎外の脚気細菌説による罪
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BSプレミアム「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」「ビタミン×戦争×森鴎外」録画を観た。森鴎外が陸軍軍医として「脚気細菌説」をとり、麦飯を取り入れて脚気をゼロにした海軍に対し、台湾、日露戦争において白米主義を押し通し、結果3万人の脚気による兵士の死者を出した、というドキュメンタリー。このこと自体は鹿島茂先生の「ドーダ」論で読んで知っていたが、この番組では鴎外に対立する海軍の高木軍医、ビタミン発見にあと一歩まで近づいた鈴木梅太郎を取り上げ、科学史のパラダイム問題として扱っていた。コッホの細菌学に学んだドイツ系鴎外と英国で疫学を学んだ高木が、ドイツと英国実証主義の思想対立でもあったのは興味深い。さらに、学部の力の強い日本では、敷居を越えて交流し共同研究をするシステムを今も作り得ていないという疫学研究社の意見は、なるほどと思った。面白い番組だった。それにしても鴎外のエリート主義とそれを支えた陸軍首脳は罪深い。
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