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夏目房之介の「で?」

映画『グランドマスター』

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http://grandmaster.gaga.ne.jp/

観ました。基本的には、ウオン・カーウァイ監督の美しい映像で見せられてしまう。お話は、カンフー映画の常で単純。カンフー物としても、技の部分を接写したり、スローにしたり、全体や足を交互に注目したり工夫され、ちゃんと見せてくれる。そして、各流派の動きも美しく再現され、八卦掌は美しいチャン・ツィイーが美しく円を描いて舞います。というわけで、まずまず面白かったんですが・・・・。
おそらくカンフー物や格闘技物好きには、そもそも「最強の流派」を決める話になってないじゃん、という不満もあろうかと思われます。葉問(イップ・マン)の詠春拳(かのブルース・リー似の少年も当然出てきます)、八極拳、形意拳、八卦掌が登場しますが、対決するのは詠春拳と各派(ただし八卦掌をのぞき、仲間との練習)、八卦掌と形意拳(ここが一応父=師父の復讐譚)だが、一種の頂上決戦で決定的な勝負がついたのは女性対男性の八卦掌対形意拳のみ。つまり、八極拳の強さは表現されるが、どことも頂上対決してません。カンフー物であれば、当然詠春拳対八卦掌ないし八極拳の頂上対決がラストの最大の盛り上がりとなるはず、ということですね。もちろん、文句をいってるわけじゃなくて、この映画はこれでいいと思います。流派の優劣とかは問題じゃない、というのもわかる。とはいえ、カンフー映画的な最終決戦物を期待した人には肩透かしであったかもしれません。

ところで、チャン・ツィイーの八卦掌のもっとも凄い技は「葉底蔵花」とされ、あたしらも八卦掌で常に練習で出てくる動きなので、主人公イップ・マン同様に、ぜひそれが観てみたかった。でも、悲恋のあげく、ついに見せてくれませんでした。残念。

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