オルタナティブ・ブログ > 夏目房之介の「で?」 >

夏目房之介の「で?」

沖田次雄『ジジゴク』1

»

沖田次雄『ジジゴク』1巻を双葉社から送ってもらいました。
これ、けっこう好みで面白いです。絵はこんな感じ。
http://webaction.jp/lineup/33/

新人さんだそうですが、絵はうまい。表紙はさらっと淡い彩色だが、マンガの白黒の絵もまた、抜けのある硬めの線の、ちょっと癖のある淡さ。
ジジイになった極道が主人公で、年金もなく、でもシノギはせねばならず、けっこう非道なことをごく日常的にちまちまとこなしている。同じくジジイの極道で、トシでボケてしまい、でもシャブだけはやってるしょうもない奴がいて、こいつを心配する娘のために会いにいくと、「ゴトーって男の玉ぁ殺んなきゃなんねぇんだ!」とチャカ(銃)を振り回す。で、結局二人で「ゴトーを待つ」のだった(バカだねー)。
主人公の親分がオレオレ詐欺に引っかかったり、なぜかPCに強く、エクセルをマスターしてるために組の経理を任されるうちに事業化を試みたり、孫を相手にポップなおじいちゃんぶりを発揮して感動的な作文を書かせたり、超能力を持ってるかもしれない寝たきり老人と戦ったり、アイデアが豊富でネタの情報も意外なほどしっかり描いてる。ただ、新人だからか、アイデアを放り込みすぎて、やや息切れ感もある。もっと気を抜く部分と、キャラを強く前に出すテンション上げるとこのメリハリがうまくなると、一般読者もついてくるかもしれない。

絵はうまいのだが、マンガとして、もう少しキャラの絵が読後に残る感じとか、アクの強さがほしいかな。でも、ちょっと注目したい人だ。感覚が面白い。

追伸
『ゴクセン』とは逆な感じだから『ゴクジジ』ではなく『ジジゴク』なのかな。
そういえば、昔小林信彦のドタバタ極道物があって好きだったなあ。

Comment(1)