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夏目房之介の「で?」

大阪府立国際児童文学館の統合案

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宮本大人氏のブログ「ミヤモメモ」に、明日「日本マンガ学会」サイトにアップするはずの〈大阪府立国際児童文学館存続要望書の内容〉が先行公開されています。

http://d.hatena.ne.jp/hrhtm1970/

手短にいうと、橋下知事がコストカット策のうちに大阪国際児童文学館を府立図書館に併合する案を含めて発表し、それに対して「慎重な再検討」を要望する、というものです。非常に緊急性の高い事で、財政再建策として急速にプロジェクトが進められる中で、マンガ史、マンガ研究でも利用できる重要なアーカイブをもつ文学館の統合は、利用の側からすると今後の研究進展に影響する大問題だ、ということで、宮本氏はじめ大車輪で対応しているという印象です。

竹内オサム氏も関西ジャーナルに寄稿しています。
http://mainichi.jp/kansai/photo/news/20080411oog00m040006000c.html

僕個人は、じつは児童館に一度も行ってません。大衆文化として、ふつう無視されるもの(たとえば出版社でも保存しきれない付録マンガの類とか)まで含めて充実した資料を持ち、それらを利用できる画期的な施設だという話は前から聞いていて、一度行こうとしたら運悪く改装中で断念しました。

なので、利用もしていない者が不用意に発言できないよなというのと、自治体の財政再建に当たって相当乱暴なことが必要なのも理解できるし、そこで文学館だけを救えというのも何かヘンな気がするし、そんなこといいだしたらコストカットなんて大抵中途半端になりそうな気がするし・・・・何やかやで、ブログにも書こうかどうしようか迷っていました。第一、僕は実際この館がどのくらいのお金を食っていて、その統合がどのくらいの費用で可能で、事実上どの程度のコストカットになるのかも知りません。署名もしてないし。

ただ、緊急性の高い情報で、マンガ研究に資するだろう施設のことなので、とりあえず個人的に自分のブログを「報道」に使おうと考えました。もし、今後も存続すれば、僕がこれからかかわる学生さんたちにとっても重要な施設になるだろうし。

理想的なことをいえば、出版社や児童文化にかかわる会社などからスポンサーを募り、財政負担を減らすメドを立てるから、残してくれとか、コストカットの代案があれば、再検討を訴えるスジが立つんでしょうが、残念ながら現状そんな猶予も力もない。

もちろん文化行政は、本来自由競争で行われるべきものじゃないけど、自治体の財政再建と日々の生活にかかわる住民サービスの保持が優先すべきであることも事実だと思える。悩ましい問題です。

将来にわたって持続的な文化行政を保証できるうまいお金回りのシステムが、ベンチャー系の人などから提案されないもんだろうかと、このテの話が大の苦手な僕は思うばかりです。

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