WEBデザイナーに本当に必要なこと
私の肩書きはWEBコンサルタントになっていますが、この業界に入った当初はデザイナーでした。もう10年前くらいですが…
必要に迫られたり、あるいは仕事を増やすために手を伸ばしていった結果、妙に器用貧乏な状態になり、何とでも取れる今の肩書きに至りました。
とは言え、両親がデザイナーであったこともあり、根っこの部分はデザイナーだと思っています。
前置きはさておき、今回はデザイナーの方に向けた記事です。
この記事をまずご紹介したいと思います。
▼So You Want To Be A Designer: Top 5 List « Aza on Design
和訳すると「デザイナーになりたいんだね?」でしょうか。デザイナーになるんだったらこの5項目をまずマスターした方が良いよ、という内容が書かれています。
ちなみに前提としてこの記事は「ソフトウェアのインターフェイスデザイン」という観点で書いてありますのでご注意下さい。
ただ、それを差し引いてもデザインに関わる方には参考になる記事です。
今回は、これを下地にして、デザイナーにとって必要なことを書いていこうと思います。
ブログの趣旨とは離れますが、ぜひデザイナー志望・デザイナー見習いなどの方に特に読んでもらえればと思います。
デザイナーは「ものづくり」だけすれば良いわけじゃない
まずは記事の中の5項目をリストアップしてしまいますね。詳細については、元記事を見て頂ければと思います。
- 最も困難なのは「文化」、交渉の能力を身につけよう
- 認知心理学を学んだ方がいい
- 少しでも良いからプログラムを知った方がいい
- とにかく作って作って作りまくる
- グラフィックデザインを学ぶ(人はきれいなものに単純に良い印象を持つ)
この記事には「ただ自分が良いと思う物を作っているだけではダメだ」というメッセージが流れていると感じました。
それがユーザーインターフェイスであれWEBサイトであれポスターやフライヤーであれ、デザイナーが職人気質になってはいけない。それは私の経験上もそうです。
では、デザイナーはどうあるべきか
マーケットドリブンに
そもそもデザインとはそれ自身で独り立ちする物ではありません。何かに付随してそれをブーストアップしたりするものです。
例えば、パッケージデザインであれば「消費者に対して製造側のメッセージをいかに伝えられるか」、抽象的に言い換えれば「コミュニケーションロスの最小化」と「メッセージそのものの増幅」
それがデザインの仕事だと私は考えています。
そうなると、自然な着地点として
- マーケットが求めているものを読み取り
- どんな希求の仕方をすれば素直にメッセージを受け取ってもらえるか考え
- それに合わせてデザインを作成する
という、マーケットドリブンの製品開発と同じ流れになるはずです。
日本の製造業がプロダクトアウトではなくマーケットドリブンに移り変わっていったように、デザインを製造するデザイナーも考え方を変えるべきではないかと思います。
つとめて論理的に
そしてそれは、世に出る前の段階、会社内部でのプレゼンテーションなどの段階でも同様です。
相手がデザインの玄人か、あるいは素人かは会社によると思いますが、内部の人間に対してきちんと自分のデザインを論理的に説明できなくてはいけません。
紹介記事の「1.交渉の能力を身につけよう」という部分です。
そうでなければ、経験論をはねのけて自分の案を通すこともできませんし、デザインに疎い方々に納得してもらうこともできません。
デザイナーは、感性的な商売だと思われがちですが、こんなに論理性が求められる商売はないと思っています。特にWEBデザイナーはなおさらです。
例えばサブページのデザインを頼まれて、その時に「なんでここに赤いラインを引いたの?」という質問にきちんと答えられるかどうか。
答えられるなら、それはきちんと論理的に積み上げて作ったものですから
- 他に人にプレゼンする時に、つっかえることがない
- 複案と比較された際に、感覚的ではなくある論理的にメリットとデメリットを話すことができる
- もしそのデザインが失敗だったとしても、次につなげることができる
といったメリットがでてきます。
※先の記事で認知心理学の話が出てきました。王道は「ドナルド・A. ノーマン」の『誰のためのデザイン?』だと思いますが、これは製品開発寄りで、WEB関係の人にとっては少しずれた内容だと思います。認知科学です。
グラフィックデザイナー・WEBデザイナーさんとしては、とにかく「自分のデザインを隅から隅まで説明できること」を心がけるのが良いんじゃないかなと。
制約条件を知っておく
また、事前に制約条件を把握しておくことが大事です。
WEBデザイナーであれば、
- 自分の作ったデザインが果たして実現可能なのかどうか
- 可能であったとしても、コーディングなど相当工数がかかるのではないか
- メンテナンスが大変なのではないか
を分かっているのと分かっていないのとでは、完成までの時間も他のメンバーとの人間関係も大きく違います。
そこで、事あるごとに「これって大丈夫?」と質問するのもいいのですが、それよりは浅く広く周りの仕事を理解する、やってみることが早道です。
やってみることで、発想の幅を増やす
実際にやってみないと分からないことはたくさんあります。
- 簡単だと思ったこんな部分が、実はこんなに大変だなんて
- システム的にこういう仕組みになっているなら、これはやめた方が良いな
- 後々のことを考えると、こういったものも作っておいた方が良いな
また逆にインスピレーションを得ることもできます
- この仕組みと組み合わせればこういうことができるんじゃないかな、相談してみよう
- WEBだとこういう表現もできるんだ
- このプログラムを使えば今までの単純作業から解放されるかも
などなど…
WEBであれば、HTMLやCSSにJavaScriptの他に、サーバそのものの知識、プログラミング(最初ならPHPあたりがいいかと)、PMが行うような進行管理のやり方、そのWEBサイトを通じてどんな営業活動が行われているのか。
その辺りを広く押さえておくと、発想の幅が大きく広がります。
また、副産物として、相手の立場に立ったものづくりや受け渡しができるようになるので、非常にスムーズに事が進むようになります。そしてそれは将来大きな物事を動かす下地になります。
終わりに
ただ自分で自分の好きな物を作る職人になりたいなら、アーティストと名乗って独立していくべきです。
そうではなく、会社や集団の中でデザイナーとして仕事をしていきたいなら、ものづくりをしているだけではダメです。ものづくりだけでやりつつ、集団でやって粋なら、相当な能力で有無を言わせず打ち負かすしかありません。
ぜひ、色々なところに積極的に手を広げてみて下さい。楽しいですよ、何より!
▼So You Want To Be A Designer: Top 5 List « Aza on Design