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新刊超速レビュー 2012/4/1~4/20

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「ガード下」の誕生――鉄道と都市の近代史(祥伝社新書273)

「ガード下」の誕生―鉄道と都市の近代史

  • 作者: 小林 一郎
  • 出版社: 祥伝社
  • 発売日: 2012/4/3

これまでにもダムマニアだとか団地団だとか、いろいろ見てきたのだが、「ガード下学会」なるものまで存在するとは、知らなかった。

本書の著者が、その「ガード下学会」の一員。普段からさまざまなガード下を訪ね歩き、「あの現し(あらわし)、いいね〜」などと熱く語り合っているそうだ。ちなみに「現し」とは、本来化粧仕上げするところを、あえて化粧仕上げせずに、下地となる木材などを見せることを指す。

本書は、そんなガード下の歴史を、日本の都市の近代化とともに振り返った一冊。「戦前」「高度経済成長期」「現代」など、大きく3つの時代に分けて紹介されている。

戦前のガード下の代表例の一つは、何といっても新橋駅〜有楽町駅間。我が国で初めて鉄道を敷設したのはイギリス人技師。車両を輸入したのもイギリス。それなのに、なぜかこの区間の鉄道敷設の担当だけが、ドイツ人技師なのだ。そのため、意匠・デザインなど、ベルリン高架鉄道の設計思想を受け継いでいるそうだ。

高度経済成長期に誕生したガード下の一つが吉祥寺だ。JR吉祥寺駅が高架化されたのが1969年。この時期に誕生したガード下のキーワードは「再生」である。大掛かりな再生工事を経て、現在はアトレ吉祥寺と名称も変えた。ガード下であることに違いはないのだが、美しく心地よく洗練された町づくりとなっている。

さらに最近作られた現代のものとなると、もはや何でもありだ。赤羽駅の葬儀場や銭湯、経堂駅の図書館、祖師ヶ谷大蔵駅の保育園や舞浜駅のリゾートホテルなど、幅広い用途として利用され、都市空間の重要な施設となっているそうだ。

時代とともに移り変わるガード下の風景。しかしその原点は、誰をも拒むことなく、日々の営みが息づいている生活道路となっていたところにある。本書を片手に、そんな「ガード下」の、個性や優しさを見つけに行ってはいかがだろうか。

(※HONZ 4/3用エントリー

日本の医療 この人を見よ (PHP新書)

日本の医療 この人を見よ (PHP新書)

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社: PHP研究所
  • 発売日: 2012/4/14

ビジネスの世界では、時として組織や専門性の壁が邪魔になる時がある。世の中全体が垂直統合から水平分散へと大きく構造を変えていく中で、既存の受け皿では解決できない課題というものが増えてきているのだ。

医療の世界も、また然りのようである。本書に登場する12人。大学病院の運営に経営的な視点を持ち込み黒字化を果たした男、Aiという死亡時の画像診断で死因究明の仕組みを変えようとする担い手、法律と医学の間に切り込む法医学のプロフェッショナル。登場人物たちが取り組んでいるテーマをざっと眺めるだけで、複合的な問題の種類の多さを伺い知ることができる。

そんなボーダーレスな課題を打破するためのヒントが、人に着目することで見えてくる。案内人は、『チーム・バチスタの栄光』でもおなじみの人気作家・海堂 尊。本書はCS番組「海堂ラボ」での自由闊達なトークを書籍化したものである。

なかでも非常に印象的なのが、海堂氏の紹介におけるスタンスだ。

ともすれば評論家は辛口で悲観的なことばかり口にする。それでは日本は明るくならないし、そもそも「海堂ラボ」の根本精神と合わない。

どのゲストも、「すごいでしょ。こんな人がいて、日本を支えてくれているんだぜ」と胸を張って言える方たちばかりだ。

この”まえがき”に書かれたコメント、HONZにおける「オススメ本紹介」のスタンスにも通じるところがあるなと思いながら読んでいた。すると次の頁で突然、HONZ副代表・東 えりかの名前も出てくる。なんと、番組を書籍化する際の構成を担当したそうだ。危ない危ない、"まえがき"を読み飛ばして知らずにレビューを書いたら、赤っ恥をかくところであった・・・

さまざまな分野を横断しながらも、コンパクトに纏まった12人のインタビュー。本書の最大の見所は、彼らを動かす原動力が何なのかというところにある。

警察庁長官狙撃事件で数発の銃弾を撃ち込まれながら、奇跡の生還を果たした國松 孝次。退院後に主治医から「あなたは都内だから助かった。地方だったら亡くなっていただろう」と言われたことがきっかけで、地方の救急立て直しのためにドクターヘリの普及を推進する。

救急隊と医療機関との連携をより緊密にするガイドラインを制定し、埼玉県における交通死亡者数を激減させた堤 晴彦。「動かなければならないときは動く」を信念に、日付の入っていない辞表をトップに提出するほどの覚悟で臨んだ。

相互扶助精神が無くなってしまえば、社会は成り立たないと考え、非配偶者間体外受精や代理出産にも深く関わってきた根津 八紘。倫理観には絶対的倫理観と相対的倫理観があり、相対的倫理観は、時代とともに変わっていく可能性があると主張する。

変わり種は、「フェイコ・プレチョップ法」という画期的な手術法で白内障の手術を3~4分で完了してしまうことを可能にした赤星 隆幸。手術のための器具を自ら開発し、特許を取得しなかったのだという。彼の思いは、一人でも多くの人達に光を取り戻してもらいたいというものだ。

組織の壁、限られた予算、少ない人的リソース、前例がないというリスクに伴う葛藤、直面する様々な問題に、彼らは一体どのように立ち向かっていったのか?

本書に登場する人たちは、必ずしも医療の世界でメインストリームにいる人たちばかりではないのかもしれない。しかし、変革の波はいつだって周縁から押し寄せる。周縁という名の最前線、打開のヒントは個に宿る。医療に興味のある人のみならず、多くのビジネスマンにとっても一読に値する一冊だ。

(※HONZ 4/17用エントリー

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