【書評】『ウィキリークスでここまで分かった世界の裏事情』:ウィキリークスより怖いもの
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著者: 宮崎 正弘
並木書房 / 単行本 / 228ページ / 2011-01-31
ISBN/EAN: 9784890632688
待望のウィキリークスに関する書籍が発売された。今月は相当数のウィキリークス本が出るみたいなので、集中的に読んでみたい。
本書はタイトルにこそウィキリークスの名が付いているが、ウィキリークスが全ての本かというと、そうでもないようだ。情報戦略というものをテーマに書かれた一冊であり、いくつかの話材として、ウィキリークスが取り上げられているという印象である。各章の構成に、若干のツギハギ感は否めないいが、このスピード感、そしてエピローグでチュニジアのジャスミン革命の話まで触れられているのはお見事だ。
◆本書の目次
プロローグ:ウィキリークスの秘密暴露は情報テロか?第1章:日本をめぐる噂と機密のあいだ第2章:ウィキリークスが暴露した超弩級の中国機密第3章:世界は密約と陰謀で動く、日本は友愛と善意で望む第4章:日米同盟に亀裂、米中同盟は進化第5章:ウィキリークスでここまでわかった世界の裏舞台第6章:なぜ日本は弘報(情報戦略)にこれほど脆弱なのか第7章:密約・戦争・テロリズムエピローグ:情報戦争、これからどうなる?
著者の立ち位置が、ウィキリークスに好意的ではないのは、その文章から明白である。しかし、ウィキリークスの世界に与えたインパクトは大きく、特にアメリカ、中国、スーダンなどの政府の対応に苦慮する模様が描かれている。ちなみに、日本に関して暴露された機密は、米政府高官が「日本を肥満した敗者、指導者にビジョンが欠落しており、室が悪い」と言った話、捕鯨問題など、重要とは思えない機密ばかりである。これを喜ぶべきか、憂うべきか・・・ しかし、まだ明るみに出ていない金融関係における機密情報がリークされるにつれ、日本企業に与える衝撃も大きなものになりそうだ。
このジュリアン・アサンジなる人物、旅芸人の家庭に生まれ家庭内暴力を受けて37回の転校。6つの大学に通い、その後世界を転々するという類まれな経歴の持ち主である。ネット上では英雄、異端児など評価は分かれるが、体制、強大組織、国家などの枠組みを大きく変えつつある。また、アサンジと仲違いし、ウィキリークスを去った人物による暴露本なども出ているらしい。どこかのソーシャル・ネットワークで聞いたような話だ。
ウィキリークスは恐ろしい。しかし、ウィキリークスによって明るみになる事実の方が何倍も恐ろしい。そして、そこにウィキリークスが関与していないのも事実である。
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