任天堂の決算説明会の3DSのプロセッサ選択理由の質疑
@aribe氏のtweetで知った内容(@kawaguti氏のretweet経由)。任天堂の2010年第2四半期の決算説明会のwebに説明会での質疑が公開されている。
多くの質問は、これからどのように売っていくか等、販売戦略に関する質問だが、その中に技術よりの質問がある。Q8-1のNintendo 3DS用の画像処理用プロセッサが世の中の主流と違うがその選択理由を教えてほしいというものだった。
画像処理のアルゴリズムをハードウェアに送り込んで実行するプログラマブルシェーダと、あらかじめ定義されたいくつかのアルゴリズムから選ぶ固定シェーダがあり、最近の多くのプロセッサはプログラマブルシェーダを実現しているそうだ。プログラマブルシェーダのほうが柔軟性が高い。
このような状況でなぜ、固定シェーダを選んだかが質問され、次のような回答が掲載されている。
- 固定シェーダとプログラマブルシェーダの採用は適材適所と考えている。
- 携帯ゲームにとっては消費電力の小さな固定シェーダのほうが妥当と判断した。
- 解像度がそれほど高くなく目の近くでみる携帯ゲームでは、固定シェーダで十分だと判断した。
- ゲームソフトの開発という観点からは、安定した性能が出る固定シェーダのほうが開発がラクになる。
- 固定シェーダを採用する制限は受けるものの一般的なメーカが採用する設計に沿っていくというわけではなく、「任天堂らしくていいじゃないか」という直観という意味もある。
tweetでも、決算説明会にこの(技術的な)質問はすごい・・・という感想があった。時代の流れに沿っていない固定シェーダの選択理由が携帯ゲームという事情を反映したものになっている点が印象深い。ゲームやユーザのことがよくわかっているからこその決定だと思える。
界隈で目立つ存在となっている人や組織は、与えられた状況に対して合理的な判断をしていることが多いように思う。職業柄、多くの人や組織とお会いする機会が多いのだが、ただ単に「他もこうしてるから」とか「前例がないから」というような理由で判断しているよりも、個々に合理的な判断をしている方のほうが「何か違う」という存在になっているように思う。
社内でも「最近の流れは~で、逆行するんですか?」というような意見は出てくると思う。そのとき「これはその流れとは事情が違う。ここでは~が適しているはず」という判断ができるのは、ある意味当たり前なのだが難しい。無難な判断のほうが失敗したときに責を問われにくいからだ。ひょっとすると「いや固定シェーダのコストが最も低いので」と言うほうが簡単かもしれない。
上述のような判断をどう思われるだろうか?