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ニュー・ミドルマンと、ソリューション・ビジネス

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昨日の田坂広志さんの講演の話の続きです。

田坂さんの語る言葉は、同じ話が繰り返し形を変えて出てくることが多いのですが、そのたびに常に新しい問題意識が喚起されます。

昨日も様々なお話がありましたが、その中でニュー・ミドルマンの話がありました。

ネット革命が本格化してきた1996年頃のシリコンバレーでは、以下の言葉が言われていました。

"Middleman will die."

インターネット普及で中抜き現象が起こり、中間業者(ミドルマン)は全て死に絶えるであろう、ということです。

そのわずか3年後、1999年頃のシリコンバレーで、田坂さんは以下の言葉を聞いたそうです。

"Middleman never dies."

古い中間業者が淘汰され、「ニュー・ミドルマン」と言うべき新しい中間業者が生まれてきた、ということです。

ただ、古い中間業者とニュー・ミドルマンは、決定的に異なる点があります。前者は企業側を見ていて「販売代理」をしているのに対し、後者は顧客側を見ていて「購買代理」をしている、という点です。

業界によって状況は異なりますが、将来的には全ての業種は購買代理型ビジネスに変わってきます。それが早いか遅いかの違いはあれ、購買支援のサービスを提供しない企業は、お客様からいずれバイパスされることになります。

また、購買代理型ビジネスではゲートウェイ戦略が最強の戦略になります。このような中で商品を提供する企業はどうすべきでしょうか?

田坂さんは、「ライフスタイルの提案が必要」とし、新技術・新商品から、商品・サービスを組み合わせることで「高付加価値化」への進化を図らなければならない、そのためには「商品知識」ではなく、「顧客知識」が重要である、と説いています。

 

さて、IT業界は購買代理型ビジネスに進化しているのでしょうか?

急速にそのようになっている部分もありますが、全てシフトしているかというと、必ずしもそうではないように思います。

「商品知識ではなく顧客知識が重要」、これはまさにソリューション・ビジネスです。しかし、「ソリューション・ビジネス」という言葉がキーワードになること自体、それがIT業界では新しい概念で今まで当たり前には提供できていなかった証かもしれません。

そう言えば、私が初めて「ソリューション」という言葉を聞いたのは1980年代、米国IBMが今までお客様毎に構築していたアプリケーションまでを含めたシステムを汎用化する概念をまとめていた頃、海の向こう側から聞こえてきました。それ以来、常にソリューションと関わってきたように思います。

一方で、お客様毎の真の問題を解決できるソリューションを提供できるベンダーは、長い目で見れば必ず伸びていきますし(「逆は必ずしも真ではない」のがまた面白いところではありますが)、市場はそのように顧客の問題を解決しようとする企業を永続できるように選別する仕組みを持っています。

そもそも、経済行為自体が、相手が困っている課題を解決することで対価を与えられるものですので、ソリューション・ビジネスは経済の基本そのものです。

従って我々は、お客様を理解し続ける努力を、常に継続していく必要がある、と言うことですね。(こう書くと、あまりにも当たり前の結論ですが)

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