日本経済に必要なものは何なのか?
産業革新機構という政府出資のファンドのようなものがある。相当な資金を政府の出資も含めて保有しているようだが、経営再建を迫られているシャープへの出資、或いは東芝の家電部門への投資などを検討していると報じられている。
特にシャープについては、台湾の鴻海か革新機構かということで、ニュースにもなったりしている。だが、そもそも産業革新機構の役割は、オープンイノベーションによって新たな技術や産業を生み出すことにあり、再生を必要とする既存の大企業を救済することではなかったはずだ。
以前に同機構がルネサスに出資をした際に、私は国民の資金をどぶに捨てるようなものと指摘した。その後機構の出資を呼び水にして民間企業の出資も仰ぎ、現状ルネサスの財務状況は改善しているようだが、ではこの企業が今後新たな産業形成に貢献するのか?そもそも事業として競争力を維持し続けられるのか、相変わらず極めて疑問だ。
そこへ来て、今度はシャープや東芝。これとて、既存残業、産業界における影響力のある大企業であって、産業革新機構が出資するとしても、これを救済することが目的であって、ここから新たな産業や技術生まれるとも思えない。そのために、また国民の血税を原資にした資金を投じるのか?
再三述べているように、我が国の製造業を中心とした産業が世界をリードした時代はとうの昔に終わっている。引き続き世界一流の技術が存在することは否定しないが、少なくとも大規模生産で世界との間で競争力を保っている産業・企業は限られている。
それにも関わらず、300兆を超える余資を抱えた我が国大企業群の経営者たちは、自らの代でリスクを冒すことを恐れ、ただ現預金を抱え込んで次の時代を担う技術開発や、海外の事業の買収など積極的な投資を行わず、アジアを中心とした海外への蔑視に基づく、自らの事業・技術への過信に基づいて、現状に安住してきた。
加えて、政界もすでに25%を切っている我が国製造業のGDPにおける比率に目を向けることなく、産業構造を無視して、製造業中心、輸出に有利な円安政策を継続してきている。そして、そのようなある意味での政策的救済を受けている間に我が国産業の競争力は更に低下を続けているのだ。
我が国経済が相応に再生するためには、相応の国民の生活レベルを維持しようとするのであれば、高い技術や品質で、価格ではない分野で国際競争力を高めることが肝要であり、産業革新機構はまさにそのような技術や産業へ向けて活用されるべきだ。だが、例えば通信やシステムといった産業分野において典型的なように、我が国の技術は極めてガラパゴス化していて、国際社会で活用するためには大きなハードルがある。
加えて、そもそも産業界にそのような意欲を持つ企業・経営者は少なく、更にそのような対象を評価し投資を決定する力を備えた官僚や金融マンは全く育っておらず、結果として競争力を自らの将来を見据えない経営で失ってきた大企業の尻拭いに、産業革新機構の資金は使われることになっている。
GDPの2倍の負債を国家が抱え、生産人口は減少の一途をたどり、産業を主導する経営者は一部の例外を除いて進取の気性に欠け自己保身に走り、多くの若者は夢を持たず、大部分の国民が被害者意識で権利だけを主張する、そんな国家に将来はない。