「コンビニ×宅配=マチの暮らしサポート」の方程式は成り立つのか
こんにちは。
今回もお読みいただきありがとうございます。
最近はコンビニに関するニュースが非常に多くなっていますね。
2015年4月7日のニュースでは、ローソンとSGホールディングス(佐川急便の親会社)が共同で会社を設立し、近隣住宅への宅配サービスを行うと発表した・・・と報じています。
以下、ニュース全文です(元URL:http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1504/07/news151.html)
コンビニエンスストアのローソンは4月7日、佐川急便を傘下に持つSGホールディングスと業務提携し、ローソン店舗を起点にした宅配サービスを開始することを明らかにした。
高齢者や共働き世帯の需要に応えたもので、お弁当などのコンビニ商品や宅配便をいっしょに自宅まで届けてくれるコンビニ業界初の試み。配達時にはコンビニ商品を紹介し、その場で注文を受け付ける「御用聞き」も。
ローソン店舗半径500メートル内の小商圏配送・御用聞きサービスを展開する共同事業会社を設立し、東京都世田谷区を中心とした約20店舗で新サービス「SGローソン マチの暮らしサポート」の開始を検討している。2015年度中には都内約100店舗へサービスを拡大する予定で、シニア層や主婦層を宅配スタッフとして新たに採用し、人材活用に取り組むとしている。
「SGローソン マチの暮らしサポート」では、佐川急便の荷物やローソン商品(店頭販売商品やローソンフレッシュの生鮮品など)の配送のほか、専用コールセンターでの注文の受付・専任配送担当者によるローソン店頭商品のピックアップおよび自宅への宅配、多機能タブレットを用いた各種ライフサポートサービスの取次業務や商品取り寄せサービスの実施を予定している。
なお、7月より全国のローソン店舗で佐川急便の取引先の通販事業者やオンライン事業者から購入した商品を24時間いつでも受け取るサービスを開始する。利用者は受取先のローソン店舗を、自宅や勤務先、旅行先などを指定することができる。
ニュースのポイントを整理するとこういうことになります。
- 6月から、ローソンとSGが設立する新会社が新サービスを始める
- その新サービスは「ローソン店舗半径500m以内への宅配・御用聞き」
- まずは都内約20店舗で実施し、徐々に広げていく
さて、この戦略が吉と出るか凶と出るか、ちょっと「ロジカる」してみましょう。
競合他社は「スーパー」
「お店で売っている商品を届けてくれるサービス」は、
類似の業界ではスーパーマーケットがすでに取り組んでいます。
「ネットスーパー」と呼ばれるものですね。
ローソンの競合他社といえば
「セブンイレブン」「ファミマ」「サークルK・サンクス」といった
コンビニだったわけですが、宅配サービスに関してのみいえば、
「イトーヨーカドー」「ダイエー」「イオン」といった
スーパーが当面は競合してくる可能性が考えられます。
だとしたら、
「既存のスーパーではなくあえてローソンを使う」
あるいは「既存のスーパーに加えてローソンも使う」
という選択肢を消費者が持つための工夫を、
ローソン&SGがどれくらい有しているか?という点が、
この戦略の成否を決めることになりそうです。
「4つのP」いってみよう
「ネットスーパー」と「マチの暮らしサポート」、
調べてみると、全く同じサービスではないようです。
違いを明確にするために、
「4つのP」というフレームワークを使って
両者を比較してみることにしましょう。
まずは1つ目のP。「Product(製品)」です。
ネットスーパーの場合、扱う製品はまさに「スーパーで売っているもの」。
生鮮食品や日用品などが中心になります。
一方で、「マチの暮らしサポート」の場合は、ローソンで売っている商品のほか、
佐川急便の荷物、"ローソンフレッシュ"という生鮮品宅配品も合わせて扱うようです。
デイリーな用途という意味ではスーパーに分があると思われる品揃えですが、
ローソンフレッシュなどのサービスと組み合わせることで、
ローソンはそのディスアドバンテージをうまく克服しようとしているのが伺えます。
さらには、付随サービスとして、
各種ライフサポートサービスや取り寄せサービスも行うとしていることから、
このあたりがネットスーパーとの差別化要因になってくるのではないかと思われます。
続いて2つ目のPが「Price(価格)」です。
ネットスーパーの場合、例えばイトーヨーカドーであれば、
通常の商品の代金に加え、配達料金がかかる設定になっていますが、
これが「マチの暮らしサポート」については、
他のニュースを見る限りでは「ローソン商品は無料で配達」と書かれています。
ただ、ニュースで書かれているのは、あくまで「ローソン商品」。
ローソンフレッシュやその他のサービスに関しては別途料金が生じる可能性があります。
現時点では比較が少し難しいですが、
ネットスーパーではトラックを用いた宅配を行うのに対し、
「マチの暮らしサポート」は手押しカートを用いるということなので
コスト面から見る限りでは「マチの暮らしサポート」の方が有利に見えますね。
3つ目のPが「Place(チャネル)」。
ネットスーパーはあくまでも
「スーパーで売っているものを届けます」というもの。
これに対して「マチの暮らしサポート」は
「御用聞きをして、欲しいものがあれば
ローソンからでも取り寄せてでも持ってくるよ」というサービスですから、
チャネルの定義がちょっと違ってきます。
顧客の行動の起点が、ネットスーパーでは「チラシ(Webを含む)」のに対して、
「マチの暮らしサポート」では「御用聞き」になってくるわけですね。
こうなってくると御用聞きをする人たちの手腕がかなり重要になってきます。
シニア層や主婦層を雇用するとニュースにありますので、
消費者と同じ目線でいろいろな提案をしてくれることを、
ローソン・SGサイドとしては期待しているのだと思います。
最後のPは「Promotion(販促)」ですが、
まさにこれらのサービスをいかに周知していくのかが、
今後の課題といってもいいと思います。
「マチの暮らしサポート」の一番の欠点は、
今のように4つのPを用いて整理をしなければ見えてこないほど、
「サービスの中身」が判りにくい、ということです。
このサービスのターゲットになるシニア層などにとっては、
「通販やパルシステムとどう違うんだい?」という点が、
今の時点ではほとんど見えてこない・・・。
その点を、サービス周知の段階でいかにわかりやすく訴求していくのかが、
一番の成功の鍵になってくるのではないか・・・と思います。
「ロジカる」どうでしたか?
オルタナティブブログに移行してから、
初めてロジカるつぼらしい記事を書きましたが、いかがでしたでしょうか。
4つのPといった基本的なフレームワークは、
経済ニュースを整理したりするのに非常に有効なツールですので、
これから投稿していく記事などをご覧いただきながら、
ぜひご自身でも試していただければと思っております。
長い記事でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。