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「夢の国のリアル」・・・あの人気テーマパークの収益源を探る

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こんにちは、今回もお読みいただきありがとうございます。


さて、いきなりですが問題です。
以下にあげる企業の「共通点」、分かりますか?

  • キッコーマン株式会社
  • 富士フイルム株式会社
  • 株式会社ブリジストン
  • 三井不動産株式会社
  • 第一生命保険株式会社
  • 株式会社講談社







どれも株式会社という共通点はもちろんありますが、業種はそれぞれバラバラです。

ヒントは今回のブログのタイトル。
(実は「不思議の国の・・・」をもじったものです)







・・・さて、お分かりになったでしょうか?









実は、これらの企業は、すべて「東京ディズニーランド」のオフィシャルスポンサーなのです。


注意深くパーク内を見て回ると分かりますが、例えば「ビッグサンダーマウンテン」の看板には「第一生命」のロゴがあり、「トゥーンタウン」の入り口には「講談社」と書いてあり・・・ところどころに、企業名がしっかりと書いてあります。食事ができるお店にも、「プリマハム」「ハウス食品」などの食品メーカーの企業名が書かれています。


スポンサー、というからには、各スポンサー企業は東京ディズニーランドの運営母体である「株式会社オリエンタルランド」に資金などを提供しているわけですが、...今回は「夢の国」ディズニーランドやディズニーシーにどれくらいのスポンサー収入が入ってきているのか、推測を立ててみたいと思います。

※この記事のうち意見に関する部分は筆者の私見であり、筆者の所属する組織その他の個人・団体の公式見解ではありません。また、この記事に登場する金額、比率等の数値には推測に基づくものが多く含まれています。正式な数値は企業の投資家情報等をご参照下さい。


さて、株式会社オリエンタルランドの決算補足資料を見てみると、東京ディズニーランド・東京ディズニーシーの収入源は、4つに分割されています。

  1. アトラクション・ショー収入 約1,437億円
  2. 商品販売収入 約1,199億円
  3. 飲食販売収入 約622億円
  4. その他の収入 約40億円
両パークの収入は、合計すると3,298億円にのぼります。


そして、この金額のどこかにスポンサー収入が隠れています。実は同社の決算資料にはそれらが明記されていないので、ココからは推測によるしかありません。しかし資料を深く読み込んでいくと、スポンサー収入がだいたいどれくらいなのか、おおよその見当をつけることが、できるだろうと思います。

スポンサー収入は「4.その他の収入」に含まれることも考えられますが、数十社の名だたるスポンサーが寄ってたかって支出する金額を合わせて40億円、というのは考えにくいですから、おそらく1.~3.のいずれか、あるいはそれら全体に含まれているだろうと推測されます。



例えば、「1.アトラクション・ショー収入」というのは、私達が入園する際に購入するパスポートに関する収入です。ごく簡単に言えば「来場者数」×「一人当たりのパスポート料金」がこのアトラクション・ショー収入となるはずなのですが、実はここにからくりがあります。

株式会社オリエンタルランドの決算補足資料には、【テーマパーク関連情報】という項目があり、そこに「来客数」と「客単価」が記載されているのです。2012年度には2,750万人(!)の来客があり、「1.アトラクション・ショー収入」の客単価は4,483円。通常のパスポート料金(6,200円)よりも安いのは、アフター6パスポートや小人価格など、安い単価での来場者もたくさんいるためです。

2,750万人という来客数に対し、4,483円という単価を掛け算すると、1,233億円となります。・・・そう、先ほど挙げた「1.アトラクション・ショー収入」と比べると、204億円くらい足りないのです。おそらくこの差額の大部分が、来場者以外からの収入、すなわちスポンサー収入ということになると考えられます(ちょっと分かりにくいので、図を参照してください)。

ディズニーの収益分析.png

同様に、「2.商品販売収入」「3.飲食販売収入」にも、それぞれ「来場者数」×「客単価」の数字との誤差が138億円、79億円ほど生じています。3つの数字を合計すると343億円。これらのほとんどがスポンサー収入だとすると、売上高の1割強がスポンサーから拠出された金額によってまかなわれているということになります。さらに、スポンサー収入には殆ど原価がかからないことを考えると、株式会社オリエンタルランドの営業利益684億円の半分が、スポンサーから得られたもの、ということまで言えるわけです。



もちろん、スポンサー側にもたくさんのメリットがあります。CMにディズニーの映像を使うことができたり、出版物に写真を使うことができたり、スポンサーならではの特典を享受できるからこそ、スポンサー料を払っているわけです。ディズニーランド・ディズニーシーのホームページでスポンサーの顔ぶれを注意深く見ると、フード関係を除けば業種が重複しないように配慮されていることが分かります。



ディズニーランドは来場者に夢を与えながら、企業に宣伝効果をも与えるパーク・・・ということですね。
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