著作権規制は厳しければ良いってものではない
「政府の知的財産戦略本部(本部長・安倍首相)は、音楽や映像を違法コピーした「海賊版」をインターネット上からダウンロードすることを全面的に禁止する著作権法改正に着手する。」との朝日新聞の記事。まだ具体的には何も決まってないようですが、ずいぶんとラジカルな改正案です。
現行の著作権法では違法コピー・コンテンツを配布したり、公開サーバ(含むP2P)にアップロードしたりすると著作権侵害となりますが、所持していたり、ダウンロードするだけでは侵害とはなりません。これでも侵害になってしまうと、たとえば、相手にわざと違法コンテンツを送りつけて罪に陥れるというようなことが可能になってしまうためと聞いたことがあります。
上記のように、著作権規制を厳しくする理由は、「コンテンツ産業を成長分野に育る」ためであるとされています。もちろん、著作権者の保護は大事ですが、結局のところ大事なのは著作物の保護と利用のバランスです。著作権法第1条にも著作権法の目的として、
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
と規定されており、著作物の公正な利用が重要であること、および、法律の最終目標は著作権者の権利保護ではなく文化の発展にこそあることが示されています。
大昔に自前のブログで引用したasahi.comの記事(元はASAHIパソコンの記事)「ユーザー置き去りの著作権攻防戦」、記事の中身自体は古くなってしまいましたが、その時引用した以下の部分の正当性は変わってないと思います。
日本は、世界で最も厳しい規制を最も早く取り入れ、摘発も最も厳しい国の1つと言える。そのような日本だからこそ、先進的なサービスも世界で最も早く始まる――というのなら理解しやすい。だが現実は逆だ。
ということで、違法コンテンツの取り締まりを厳しくする→正当コンテンツの売り上げが増える→コンテンツ産業が成長するという近視眼的発想での著作権法改正だけは勘弁してもらいたいと思います。