Redmond 生活:ガソリンを入れよう
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さて引き続き米国本社にてインターンシップ中の当方なのだが、今回ガソリンスタンドで給油してみたのでその報告である。
手慣れた人にはどうってことないのだろうが、なにせ当方、海外レンタカーは常に満タン分の先払いパッケージを選択してきたこともあり、アメリカではガソリンスタンドを利用したことがない。せいぜい、10 年以上前に同僚の利用を横で眺めていたことがあるくらいである。
そしてさらには、こちらのガソリンスタンドに対して、まったくもっていいイメージを持っていない。そもそも利用したことがないので、ソースは映画やドラマや衝撃映像 100 連発なのだが、こちらの郊外のファミレスやファストフード店と並んで、ガソリンスタンドは常に何か事件が起きそうな場所である。外では店員が Yo とか Bull Shit とか言いながら、電磁誘導できそうな指使いでニワトリみたいにうろついているはずだ。中の薄暗いレジでは、常に不機嫌な爺さんが、無言で釣銭をカウンターにたたきつけてくるに違いない。客は客で、給油中にライターの火をつけてポンプに引火したりとか、柱に激突して屋根を倒壊させたりとか。いやだなぁ。憂鬱である。
まずは給油機に横付け
でもガス欠では通勤できないので仕方ない。暗くなってからではとても怖くて行けないので、人目がある日中のうちにとっとと済ませるのだ。ここは緯度が高いので、夕方 5 時台にはもう暗くなってしまう。会社帰りに、会社から一番近い TEXACO のスタンドに寄ることにした。
Wikipedia には、シェブロンに買収されたのち 2005 年にテキサス以外の州でのテキサコブランドは消滅しているかのようなことが書かれているが、ワシントン州のここにはまだあるではないか。でも、小さ目でちょっとボロい雰囲気である。2 つの島に給油機が合計 8 つ。奥に見える建物も、窓ガラスが暗いスモークのため中が不明だ。幸い外にニワトリはいなかったが、いかにも建物の中には不機嫌じいさんがいそうな佇まいだ。暗かったらまず避けたい場所なのである。
しかし、ここでおどおどすると付け込まれる。まず余裕を見せつけるのだ。手前の給油機の前に一発で颯爽と横づけだ。運転席の窓越しに給油機の操作パネルを確認してみたが、事前にネットで調べておいたのと同じような形状でひとまず安心。ギアをパーキングに入れ、ハンドブレーキを引き、エンジンを切る。何かの間違いで勝手に走り出し、給油機に突っ込んで炎上でもしようものなら、今度は自分が衝撃映像 100 連発でさらし者になってしまう。
運転席の下のレバーを引き、ガソリン注入口の蓋を開ける。落ち着いた雰囲気を装いながら車外に降り、振り返る。と、なんとそこに、ガソリン注入口がないではないか!まさかのフライング スタートである。給油口は左にあるものという先入観が刷り込まれていたようだ。
この時点でもう、見かねた店員がやってきてしまった。踊ってこそいないが、やや予想に近い雰囲気の兄ちゃんで、ちょっとビビる。が、ここは平静を装わねば。あ~そっか~日本とはキャップの向きが逆なんだね~借りたばっかりのレンタカーなもんでよく見てなかったよ~ hahaha、などと言ってみる。すると向こうは、いや~ほかのスタンドならもっとぐる~っと反対側まで回る長いホースあるんだけどうちは短くってごめんね~、という、知識に乏しい当方には本当なのかジョークなのか判断しかねる返しをしてくる。う~ん、いやいや、いくらなんでもそれは嘘だろう。レンタカー外人の初回訪問以外では役立たずどころか不便そうな長いホースなんか用意されているはずがない。ここはジョークの可能性が高いと判断。Hahaha, No Worries と笑い話として受け取ったニュアンスで、再び車に乗り込み颯爽と転回だ。
給油準備
次のステップは、車の給油口のキャップを外し、給油ノズルをズボっと突っ込むことである。たいがいの給油機ではガソリンの種類が 3 種類程度の中から選べるようになっており、種類ごとにノズルが分かれている。ここも同じで、安い順に Unleaded、Power Plus、Power Premium の 3 種類。Unleaded というのは「無鉛」という意味なのだが、もちろん上位 2 種も無鉛である。だから、一番安いのが Regular という表記だったりするスタンドもあるらしい。給油機にある説明によると、ランクの違いはほぼオクタン価違い、つまりノッキングしやすいかしにくいかだけのようである。しかも、87 - 89 - 92 という数字の違いがそんなに大きいとも思えない。当方の車はとくにハイオク指定ではないし、Unleaded が 3 つ並んでいるうちの真ん中だったので、それを選ぶことにする。
ノズルを給油口に差し込む前でも後でもいいが、給油機のノズル ハンガーの下の部分、ノズルの重さを支えていた部分が動くようになっているので、それをガチャっと上にあげる。これが給油の機械的なストッパーになっているのである。以降に述べる別の操作がないとどのみちガソリンは出てこないので、こいつの必然性については全く理解できないのだが、どのスタンドの給油機もほぼこの方式のようだ。よほど給油機に信頼性がないのか、あるいは過去からの習慣で形式的に残っているだけのものなのかもしれない。
<ブレてなんだかわからないので次に行く機会があれば撮り直します>
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カードか現金を預ける
そして店員に現金かクレジットカードを渡す。レンタカーを借りるときなども一緒だが、逃走防止のためのデポジットなのだ。完全に手元を離れるので本当は現金にしておきたかったところなのだが、会社での精算のためにはカード利用が必須なので仕方ない。デポジットなので、現金の場合はちょっと多めに預けておき、余ったら返してもらう感じのようだ。当方は満タン希望だったので Fill it up と言っておいたが、Up to 20 dollars などのように上限指定もできる。指定量の給油が終わった段階で、支払いプロセスが走り、カードもしくは現金のおつりが返ってくるのである。
実は、こちらで作ったクレジットカードなら給油機で直接使えるので、何もびくびくしながら店員に預けなくていい。しかし国外のカードだと、もちろんカード自体はおんなじ構造なので認識はされるのだが、給油機ではさらにそこで郵便番号の入力を求められる。この番号がアメリカの郵便番号でないと通らないのだ。もちろんカードに記録されている番号との照合も走るので、知っているアメリカの郵便番号を適当に入れてもダメなようである。どうも不正利用防止が目的らしい。カードに思いっきり書かれているセキュリティ コードよりはだいぶマシな方式なのだろう。
給油開始
当方からカードを預かった店員は、給油機の島の中にある、高速道路の料金所のような小部屋に入り、何やら装置を操作し始めた。すると自分の給油機の表示が変わる。これでようやく給油の準備完了で、ノズルのレバーを握るとガソリンが出てくるようになるのである。のちにざっと眺めた範囲では、周辺の大多数のスタンドでは一様にコンビニが併設されており、そこでオペレーションと精算をしているようだ。ここはそれが外のブースにあるわけなのだが、あのスモークガラスの中だったらやだなと思っていたので、助かったのである。
あとは日本と一緒、満タンになれば勝手に止まるので、それまでレバーを握り続ける。いったん止まっても、また差し込んでもうちょっと足していくあたり、やはり日本と同じ光景である。待っている間は、店員と笑顔で雑談でもしておこう。敵意がないことの表明は、余計なトラブルに巻き込まれないための重要な基本動作なのだ。フランクに接しすぎたのか、どうやらスモークの向こう側にあるらしいエロ本をしきりに勧めてきたのだが、そこは笑顔で断る。
さて、満タンになって給油が止まったので、ノズルをもとに戻し、そのあたりで雑用をしていた店員に終わったよーと教え、精算してもらう。このとき、給油機にも値段と給油量がデジタル表示されるので、それを確認。カードとともにもらったレシートにも同じ金額が書いてあることを確認し終了。Have a nice weekend - You too ということで、無事、変に絡まれることなく、ぼったくられることなく、無事ガソリン給油ミッションはコンプリートしたのである。
ただそれだけの話なのであった。
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