幸福主義は、あなたを幸福にしない。
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柄谷行人「倫理21」より:
・道徳性が共同体の規範に由来するという考えと、幸福主義(功利主義)。カントはそのいずれをも批判しようとしました。
・人が自由にふるまっているように見えても、実際は、さまざまな教育や宣伝などで刷り込まれた欲望を満たしているだけです。
・では、自由あるいは主体は存在しないのだろうか。カントは、それは実践的(道徳的)な次元でのみ存在すると考えました。
・カントは、自ら『自由』であること、さらに『他者を手段としてのみならず同時に目的(自由な主体)として扱え』ということを普遍的な道徳法則としました。
・カントは晩年に『恒久平和のために』という本を書きました。これは二十世紀に国際連合を生み出した理念です。
・先進資本主義国家は、その『国民』の幸福のために、将来の危機において戦争を辞さないでしょうし、『国民』の間にナショナリズムを喚起するでしょう。
・そのような事態を避けるために、われわれは何かをしなければならない。
・そうしたとしても、われわれが得をすることはないし、未来の人間から感謝されるわけでもありません。
・にもかかわらず、そうすべきだということは、われわれ自身の問題です。それは、未来の他者を目的として扱うということです。
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