オルタナティブ・ブログ > 読むBizワクチン ~一読すれば身に付く体験、防げる危険~ >

商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

大事な鞄が無い!

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飛行場珍体験集
大事な鞄が無い!
 すべて入った鞄が無いことに気が付いたのは、成田空港のリムジンバスに乗る直前だった。すべて入っていた。ノートも、パソコンも、仕事の書類も、お金も、ほぼすべてが入っている。
「ワアー、か、鞄がない」

 私は後ろに並んでいる正直そうなおばあさんに、
「空港の荷物コンベヤーのところに手提げ鞄を忘れたようなので、ちょっとだけ見ていていただけますか」と、スーツケース2個の乗ったカートを置いて、走って空港の中に戻った。

 今、出てきた税関のロビーにはどうすれば入れるのだろうか?右を見ても、左を見ても分からない。私が分かっているのは、今出てきたところを逆行すれば入れるということだった。

 私は出口の扉の前にいたら、一人の到着客が出てきた。私のその後を逆に入っていった。税関の検査場に入るには、もう一つドアがある。見ているとそれが開いた。そして私は中に入った。

 税関の係官が到着客の検査をしながら、私が入ってきたのを見つけて、仰天している。それを見て、私も仰天してしまったが、そんなことを言っている暇はない。

 係官が、私を指さし、
「そこの男性、税関に逆行して入ってはいけません。待ちなさい」と大声で呼びかけてきた。
「すみません。鞄をコンベヤーのところに忘れたようです。到着客です」
「待ちなさい。止まりなさい」と、3列の係官が、私に向かって走り出した。完全に命令形で、ちょうど刑務所からの脱走者を追いかける形だ。私が鞄を受け取ったコンベヤーの周りには全く何もなかった。その時には、私の両側に係官がいて、
「あなた、逆侵してきて、どういうつもりですか」

「私の鞄」と言いながら、私は今度は、出口に向かって走り出した。
「と、止まりなさい」と、大声で係官が叫んだが、係官がピストルを持っているわけでもないので、検査台を超えて、出口に走った。
 すでに3名の係官が私を追って3方から走ってくる。
「待ちなさい」

 税関検査の最初のドアの前に来たら、(当たり前だけど)自動的に開いた。そこを突き抜けて、外に向かって走った。
「待て」とすでに、まったく完全な短縮命令形だ。

 外に出る二つ目のドアの前で、係官が私に追いついて、後ろからはがい締めに捕まえた。その途端に二つ目の、外に出るドアが開いた。

「ああ、あった」

 ドアから、一直線の向こうに、リムジンバスのチケットカウンターが見えた。そのカウンターの手前に、誰もいないカウンターの手前に、まさに私の鞄がポツンと置かれていた。違う。私が置いていたのだった。

 はがい締めされながら、私は鞄を指さした。私を後ろから締めていた腕が緩んだ。

「あれがあなたの鞄ですか...」
「はい。そうです」
「鞄が見つかったのですね」
「そうです」
「分かりました。良かったですね」
「ありがとうございます」

 こうして、私はバスにも間に合った。

教訓 とにかく貴重品の入った鞄は、絶対に自分の身から離してはならない。これが日本だから鞄は残っていた。東南アジアやヨーロッパなら、間違いなく消えていた。

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