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商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

ジャンボの出発時間ちょうどに空港に到着

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飛行機搭乗前珍体験
ジャンボの出発時間ちょうどに空港に到着


 朝6時53分ロンドン発のユーロスター列車で、ヨーロッパ・リリー駅に向かい、そこから接続のTGVでシャルルドゴール(CGD)に11時半に到着し、13時35分のタイ航空でバンコクに向かう予定だった。ヨメサンと二人の旅行だった。

 出発時間になっても動かない。おかしいなあと思ったら放送があって、ユーロスターが故障して、半時間遅れて、別の列車に乗り換えて出発したら、リリー駅で接続予定のTGVは間に合わなくなった。

 最後のチャンスは、リリー到着15分後に出発する通常の列車でCDGに向かう以外なかったのが、リリー駅の駅員の不親切さで、乗り過ごした。怒り狂った私は、駅長と直談判した。

 駅長が調べた次のTGVでドゴール空港に寄るのは、15分後だった。それは13時10分に到着する。ドゴール空港では、鉄道駅からターミナルまで最速で15分かかるとして、13時35分とすれば、出発時間前には到着できる!

 まず、駅長の携帯電話を借りて、タイ航空のドゴール空港のカウンターを呼び出した。事情を話して、到着時間も説明したら、
「できるだけはやく来てください」と言う。私はタイ航空の係員の名前を書き留めた。駅長は遅延証明を出して、スタンプを押してくれた。
「すみません。携帯電話を貸して欲しいとフランス語で書いていただけませんか」と頼んでおいた。

 私たち2人は合計六つの大きなかばんを引っ張りながら、TGVのプラットホームに歩いていった。こういう最悪の時には、女性というかヨメサンは強い。
「もうここまでやったんだから...」と半分諦めている。

 列車が走り始めたとき、ようやくドッと疲れが出て、空いてる席を探して座った。すぐに車掌がきて、私の乗る予定のTGV の切符と駅長のメモを見せたら、別の席に案内してくれて、
「ここに座ってください」と丁寧だった。
「すみませんが、携帯電話を貸してください」メモの効果は大きかった。

私は再びタイ航空に電話をかけ、同じ係官に、
「すでにシャルルドゴールにTGVで向かっている。お願いだから、私たちが到着するのを待って欲しい。お願いです」
「できるだけ待ちます。とにかく急いで来てください」
「飛行機の機種は何ですか」
「ジャンボです」

 必死になっていたが、この時点で私はほとんど不可能だろうと思っていた。何といっても、シャルルドゴール空港で、駅からターミナルまでが遠い。タクシーでぶっ飛ばしても、10分ぐらいは簡単にかかってしまうはず。

 乗れなかった場合の対応を考え始めていた。日本への電話連絡。チケットの変更と新しい予約。その際の費用はかなりかかるだろう。考えるだけでも嫌になる。

 あと10分ぐらいで、シャルルドゴールに到着する時点で、私は車掌の携帯電話を再び借りた。
「あと10分ほどで、TGVが着くから、待ってて欲しい」
「グッドラック」

 列車はようやくシャルルドゴール空港駅に滑りこんだ。ドアが開くと私はエレベータかエスカレーターを探した。ホームの中央にエレベータが見えた。大きな荷物を引っ張り、エレベータの所に行き、ボタンを押した。エレベータがなかなか来ない。

 一分、二分と過ぎていく。エレベータを待って5分過ぎてしまった。私自身が爆発するかと思った瞬間に、エレベータの中でカタンと音がして、動き始めた。

 ようやくドアが開き、駆け込んで、聞いていたバス乗り場の階層まで、ボタンを押した。ゆっくりゆっくりエレベータが上がっていく。
もう私が先に降りて、エレベータのロープを引っ張りたくなるほど遅い。途中の階で降りる乗客。ドアが閉まって、上っていき、着いた。

 シャトルバスの階層に出たら、チェックイン時間でなくて、飛行機の出発時間まで、あと15分近い! もうだめだ。
外に飛び出した私は、ターミナルの間を回っているシャトルバスを探したが、どこにもない。

 その瞬間、絶対絶命だと思ったら、道路の反対側に、ヒルトンホテルのシャトルバスが止まっていた。これ以外に車はなかった。運転手が車体を、ゆっくりと布でふいている。私は荷物をヨメサンにまかせて、その運転手のところに走っていって、
「お願いです。タイ航空の飛行機に乗らなければいけないので、私たちをターミナルまで送ってもらえないだろうか」私は、半泣きで必死だった。

若い運転手は、
「分かった。乗りなさい。送って行こう」と言ってくれた。

「おおい、送ってくれるぞ。早く来い」と言いながら、自分の荷物を取りに走っていった。すべての荷物を車に乗せて、走り出した。
映画のカーチェースのように、全速力で走ってくれた。ぐるっと回らなければならないので、バスならこのようにも走れなかったろう。

「あのターミナルだよ」と見えてきたが、すでに出発時間の13時35分になっていた。
 これは幾ら何でも、荷物のチェックインはできないだろうし、パスポートコントロール、そして遠いゲートまでの距離を考えたら、絶対に無理だと感じしていた。とにかく全力を尽くした。

 私はもちろんその運転手にチップを差し出した。
「ありがとう。本当にありがとう」
ヒルトンのバスがターミナルに到着したとき、そのターミナルの外に、1人の係員が立っていた。

「ミスター樋口?」
「はいそうです」
「待ってました。急いで、飛行機が待っています。もう出発します。急いで」
なんと、タイ航空の係員が私たち二人を待っていてくれた。だから私はタイ航空が大好きなのだ!

 タイ航空の係員が、大きな預け入れ荷物を2個掴んで急ぎ足でチェックインのカウンターに進んで、切符を切って、荷物は更に2人の係員が担いでどこかに走っていった。

一瞬、荷物は大丈夫だろうかと思ったが、まだパスポートコントロールも済んでいない。
「こちらです。急いで、急いで。パスポート」パスポートコントロールは簡単だった。その後、空港の中をほとんど走っていた。
ゲートがようやく見えてきて、私たち2人が最後の乗客となって、扉に入る前、助けてくれたタイ航空の係員と大きく握手をした。
「助かった。本当に助かった。ありがとう」
「あなたが、あれだけ頻繁に電話をしてこられたので、どこにいるのかがよく分りました。それを無視できませんからね。本当にラッキーです。もう実はドアが閉まっていてもおかしくない時間を過ぎているのです。良いご旅行を」

 乗り込むやいなや、ジャンボの巨大な扉が閉まる音を後に聞きながら、私たち2人は座席を探しに通路を歩いていた。荷物も無事に載っていた。

教訓 本コラムでは詳しく書かなかったが、ヨーロッパの鉄道で、特にフランスの鉄道はサービスが最悪。切符売り場は混んでいると1時間ほど並ばされる。駅長や車掌さんが携帯を使わせてくれたのは良かった。我々の新幹線が天国に見える。無理な予定を立てた私が悪かった。それにしても、最後の2人の乗客を、空港の外で待ってくれている飛行機会社、飛行機会社の社員がいるだろうか?私はタイ航空の思いやりに感動した。
とにかくこまめに報告したおかげで助かった。
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