鶴の一声
IT 部門には全社の様々な部門から、様々な 粒度のIT 投資へのリクエストが集まります。PC の新規購入や、ソフトのバージョンアップ。ネットワークの増強。ERP のバージョンアップ。Web の刷新。CRM のEOS・・・これらの膨大で様々なレイヤーのリクエストを、統一した基準で投資適合性を判断することが重要です。
日本の意思決定には、いわゆる「鶴の一声」というトップダウンと、「根回し」とよばれるボトムアップの2種類があるかと思います。しかし、通常鶴の一声は整合性にかけ、根回しには時間がかかりすぎます。
こんな話を聞いた事があります。ある社員300人程度の企業でERPを導入する事が検討された時、社員は反対しました。ビジネス規模に対してあまりにもコストが大きかった
からです。手作業でやった方がよっぽど安くて早いというのが社員の意見でした。しかし社長の鶴の一声でERPの導入が決まり、外部コンサルを入れた開発がスタートしました。
しかし、その結果として、他の予算を削る必要に迫られてしまい、Webページの更新といった、新規案件獲得のための予算が削られたそうです。
またこんな話も良く聞きます。プロジェクト担当者が、自分のプロジェクトを通したいが故に、効果を過大にアピールして、工数を過小に評価して予算を取ったが、プロジェクトは火を吹き予算追加が必要になり、作りあげたアプリは、結局誰にも使われなかった。
要求管理の業務フローと承認ルールを明確化することは極めて重要です。「声の大きさ」で物事が決まる事は往々にしてありますが、IT投資に関しては、バランスや戦略そして必要性に基づく意思決定が極めて重用です。セキュリティへの投資を怠れば、企業は一瞬で信頼を失います。
「鶴の一声」と「根回し」の問題は、このどちらものプロセスも公には見えづらいというという事です。CIO は部門の力関係やしがらみに捕らわれる事なく、戦略に基づいた投資判断が求められます。企業は、IT投資管理プロセスを構築し社内に対して公開する事が必要です。各プロセスの承認者には、投資の承認をした事でプロジェクトをサポートする責任が伴いますし、投資リクエストも多面的に判断されますので、起案者も、とにかくプランを通すために無理に予算を低く見積もったり、スケジュールを組んだりといった事を避けるようになります。統合要求管理システムとガバナンスワークフローの構築する事で、これまで予算作成の際に発生していた膨大な社内業務を削減し、かつプロセスを公開する事で、不合理な意思決定がなされる可能性を排除して、迅速に戦略に投資を追随させる事が可能になります。
そして、もう一つ重要な事は、定期的な予算配分の見直しです。
経済環境は急激に変化しており、そのスピードは年々早まっています。企業経営もまた経済状況に応じて迅速な対応が求められています。
そして IT 投資もそのスピードに追いつく事が必要です。これまでのように年初に一度予算配分を決めたら、一年間その予算を維持するのではなく、例えば四半期毎に、戦略に応じた IT ポートフォリオの組み換えがなされてしかるべきです。
このスピード感のあるIT投資管理を実現するためには、専用ツールの活用が有効になります。