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ある時はコンピュータの製品企画担当者、またある時は?

医も客商売

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矯正が必要かもしれないと歯医者に言われたと、妻から初めて聞いたのは何年も前のことだ。近所の歯医者に娘の虫歯チェックに出かけたら、歯並びを見てそう指摘されたらしい。矯正と聞いて、歯に事務用品のクリップにみたいなやつを沢山貼り付けて、口元をピカピカさせていた友人のことを何となく思い出した。それと同時にン十万単位でコストがかかるかもしれないということも頭をよぎったが、その時は骨格もまだ成長するだろうから様子を見るので良いと言われたので、以来すっかり忘れていた。

先日娘の歯にフッ素を塗ってもらいに歯医者に行ったら、やはり同様なことを言われたらしい。そして今度は様子見ではなく、確実に矯正するならそろそろとりかかった方がよいとの忠告である。僕は呑気に構えていたのだけれど、妻の方はやはり矯正中の娘の友達の親に様子を聞くなどしてせっせと情報収集に励み始めた。どうやら潮時だと考えるのは正しいらしい。いつまでもぼうっとしていたら、親としてどうするのだという厳しい追求を受けるようになったので止む無く腰を上げ、口コミにインターネットで得た情報を総合して検討したあげく、専門の医者を何件か絞込み、矯正相談の名目で予約を取った。かなりのコストが発生する可能性のあることなのだから、という理由で、僕も引きずられるようについて行くことになった。

最初に訪れた医者は新興住宅地に開業してまだ数ヶ月らしい。相談料として2100円を支払うと、口の中を眺めた後にデジカメで娘の歯を何枚か撮影すると、PCで画像を見せながら事例と共に一通りの説明をしてくれた。開業して間もなくて、これから固定客をつかむためにもよい評判を得たいはずだから、それなりにきちんと対応してくれるだろう。人間としても真面目そうだ。

次に行ったのは開業して10年以上のベテランだ。インターネットの掲示板に書き込まれている評判から判断して、腕は悪くなさそうだ。口の中を一瞥しただけで終わってしまったのは、相談料が無料なのだから仕方ないにしても、その後僕と向き合って椅子に座るや否や、知りたいことは何ですか、と来た。実はこれには面食らってしまった。予め歯の矯正相談という名目で予約を取って出かけたのであるし、医者の方も当然そのつもりで歯を見てくれたはずだ。だとすれば、矯正の必要性とその際に発生するであろうコストに関心があるに決まっている。まだきちんとした診断を受けたわけではないので、ある程度一般論になってしまうことは承知の上である。何も言わなくてもまずはそのあたりを一通り説明するのが先で、質問はありますか、はその次であってしかるべきだ。ここで一気にマイナスポイントを稼いでしまったその医者は、イメージを挽回することなく終わったのである。

矯正というのはとりかかると時間がかかるもので、場合によっては1年半から2年近くにも及ぶらしい。医者との付き合いもそれだけ長いことになる。過去の実績も大事だが、それなりに頭の回る人間でないと困るのである。最初から、質問は何かとやらかすようでは付き合いきれそうにない。そう判断した結果、最初に訪れた医者により正確な診断をしてもらうために、次回の予約をした次第である。

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