オルタナティブ・ブログ > 猫のベロだまり >

ある時はコンピュータの製品企画担当者、またある時は?

西海岸の警察官

»

恐る恐る車の後部トランクを開けたら、そこにあるべきものがない。一瞬目を疑って周囲を見回して、再度目を転じてもやはり状況は変わらない。「とうとうやられたか」と茫然としながら運転席に座りなおして、何が起きたのかを後部座席にいる妻に報告すると、やはり驚きの声が上がった。

数年前にアメリカ西海岸を家族でドライブ旅行をした際の、ロサンゼルス近郊のショッピング・センターにおける出来事である。それまでに何度もアメリカを旅行したが、運の良いことにただの一度も被害にあったことがない。それがとうとうトランクから見事にスーツケースごと持ち去られてしまったのである。どうりで、車内に戻って来た時に、何となく室内が物色されたような雰囲気を感じたわけだ。

まずは車内で「やられちまったねぇ、、、(実はため息)」と妻とのんびりとした会話をしながらショックの余韻を味わうことにする。被害にあった品々を挙げては、その都度新鮮な絶望感に浸るが、だんだんと大した被害ではなかったことに気が付いた。カメラとか、パスポートとか、その他金目の物全ては僕が持ち歩いていた小型リュックサックの中にあって、無事だったのだから。やられたのは着替え類が主で、盗んだやつらにとってはガラクタの山だ。ざまあ見ろだ。無くなったものが返ってくる可能性は限りなくゼロに近いが、少しずつ元気を取り戻すと、今後のために被害届を出しておこうという発想に切り替わっていった。

ショッピング・センターのオフィスに届けたら、すぐに2人組のパトカーに乗った警官がやってきた。おそらく連絡してからものの5分といったところだろう。マイアミバイスなんて程ではないが、クールな感じのお兄ちゃん達だ。状況を説明すると、もっともらしく車のドアの縁あたりを銀粉のついた筆でパタパタとやっている。おっこれは指紋採取だな、と思っていると、1人がやおら振り向いて、敵はどうも指紋を残していないようだと言っている。ほらこうすると指紋って見えるんだぜい、と僕に車体に触らせてから実験して見せてくれる。君達、物を取り返すことなんぞまず考えていないね。いやいやいいんだ、僕はとにかく被害届を出したという事実が欲しいんだ。被害届の番号だけ教えてくれ。最後にこれからどこへ行くんだい、という問いに、ディズニーランドだと答えたら、スペースマウンテンは絶対に乗らなくちゃ駄目だとか、ビッグサンダー・マウンテンは面白いとか、そんなことはとっくに調べてあるよ、といったことを一生懸命教えてくれる。まあ、君達にとって車上荒らしなんぞ、暇つぶしにしかならないんだろうねぇ。

最後に旅行を楽しめと言われ、握手をして別れた。なんとも人のよいお兄ちゃん達であったが、今でも一つだけやっておけばよかったと悔やんでいることがある。滅多にないことであるから、記念に警官と一緒に写真をとればよかった。そしたら自慢(?)できるのに。

Comment(0)