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スマート革命とスマートテレビとロケフリ、放送業界の心変わりか「ロケフリ」を容認へ日経記事「NHK・民放番組、スマホでどこでも 専用TV経由」

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<序文>

 子供の日(201355日)の日経朝刊に載った記事ですが、放送業界がテレビメーカーと組んで個人による「ロケフリ」を容認するそうです。その結果、テレビメーカー(ソニー、東芝、パナソニック)は2013年内にでもロケフリの可能な専用テレビを販売することになると記事は述べています。ロケフリ用の専用テレビを活用すればスマフォなどでライブや録画が海外を含む自宅の外から自由に見られそうです。

 

あれだけ反対していた「ロケフリ」に対して放送業界は何故心変わりをしたのでしょうか?またテレビは再度、売れ始めるのでしょうか?ともあれ、これでソニーのエアーボード類似製品は大手を振って復活するかもしれません。

 

 

★★NHK・民放番組、スマホでどこでも 専用TV経由  日経記事

 

★★ NHK・民放番組、スマホでどこでも 専用TV経由  :日本経済新聞

 

★★2012年度の薄型テレビ出荷は前年比65%減の576万台 - JEITA発表

★★東芝幹部「ひどすぎる」、最悪見通し下回るテレビ販売の実態

 

 

★★最高裁が「まねきTV」訴訟で審理差し戻し、自動公衆送信に相当すると判断

 

★★ まねきTV

 

★★2013/02/14 残念ながらこの度の最高裁への上告が棄却されました。

 

引用 (出所:まねきTV)

現在は最高裁判断に沿うように新しいシステムにてサービスを行っていますが、最高裁判決の通りに賠償金を支払ってもこの先この新システムに付いても又訴訟 を起こされる事が十分に考えられます。もう約10年間相手側は当サービスのみに訴訟を起こしてきました。この訴訟に時間と労力を費やしてきて、今は大企業 であるTV局6社とこれ以上争う力と約10名の弁護士先生方が普通では受けていただけない様な費用で助けていただいていても訴訟費用が大きな負担になって います。
ご利用中の皆様にご迷惑をお掛けする事を一番心配していますがまねきTVのサービスを終了致します。

 

引用終わり

SONY エアボード IDT-LF1

idt[1]    

<出所:http://wine-and-roses.blog.so-net.ne.jp/2010-01-28>

<ロケフリ裁判とその後>

 放送事業者はエアーボードなどソニーのロケフリ機器(AV伝送機器「ロケーションフリー」)を活用した永野商店のロケフリ業務代行サービスであるまねきTVに対して裁判を起こし、20111月最高裁で逆転勝訴を勝ち取っています。

これによって業者が代行する形でのロケフリは出来なくなりました。かわいそうにとうとう永野商店はサービス中止に追い込まれています。(20132月)

 

一方個人が直接行うロケフリは、最高裁の判決では違反では有りません。しかし放送業界が嫌がっていると言う意図をくんだソニーは、あれだけ生活者の支持を得ていたロケフリ機器を自主的に販売中止としました。その結果、その後他メーカーから登場した全録やスパイダーなどの録画機には自宅外での視聴が出来るロケーションフリーの仕組みはありません。

 

その後は米国製のスリングボックス(ソフトバンクとスプリントを巡って争っている例のデイッシュネットワークの子会社が元締めです)などが国内で細々と販売されていました。

 

しかしここにきてソフトバンク等アライブ(放送業界とテレビ業界による標準規格設定の為の電波産業会)に無関係の業者がロケーションフリーの機器とサービスをどんどん開始し始めていました。

 

今回のロケフリ専用テレビはこの流れに乗っかった動きです。記事の内容から判断してアライブも個人によるロケフリは認める方向と考えられます。

 

上記のロケーションフリーの方式は現在「ホームクラウド機器」の一部として整備され始めています。

 

問題は放送業界による代行業者のロケフリの容認の可能性や自宅に「ホームクラウド機器」(専用テレビのような特別な機器が必要です)を置く方式が広く生活者に受け入れられるかでしょう。

 

<理由は漸増するテレビ離れ>

 20117月(東北三県は20123月)に実施された地デジの結果、テレビが売れなくなり、また総世帯視聴率は60%台の下を目指して次第に下がり始めています。2012年頃までは地デジに対する駆け込み需要やエコポイントの反動が「テレビが売れなくなった理由」(ピークの年間約2519万台から2012年は約5766千台へ販売が惨憺たる落ち込み)と考えられましたが、2013年に入ってもテレビの販売が顕著に回復する見通しが無い為、明らかに視聴者のテレビ離れが進み始めたと考えられます。

 

テレビは見られていない(放送業界が困る)、売れていない(家電メーカーが困る)と言う状況です。一方その後に台頭したスマートフォンの爆発的普及もあります。

 

2011年の地デジ自体は打ち出し方が電波を携帯サービスに移行する為の国策と言う見せ方をした為、多くの生活者は徴兵制度と同じで「御国の為に税金を払わされた」と言った認識(心の傷)を持っています。2008年米国のオバマ政権が大統領就任式でCNNやフェースブックに依頼してインターネット放送を実施したようなテレビの未来のビジョンを示す式典が日本では一切実施されませんでした。そのつけが生活者の「未来志向のビジョンの無いテレビ離れ」として次第に効いてきている訳ですね。

 

さてこう言う視聴者のテレビ離れの傾向に対してNHKや民放キー局は手を打つ必要がありました。

 

その結果、最高裁の判決で永野商店などのロケフリ業者を罰してまで勝ち取った「ロケフリ」=悪のイメージを放送業界自身が修正し始めました。メーカーとテレビメーカーで構成するアライブは、業者によるロケフリ実施(これは最高裁で違反認定)はおろか個人によるロケフリ(これは最高裁で合法)まで禁止する規制を実施して来ました。しかしここに来て個人によるロケフリは認めると言う姿勢に転換しています。確かにこれは一歩前進です。

 

さてその結果、ロケフリ専用テレビやコボプラグのようなホームクラウド機器が売れるか、生活者は便利だと思うか、「サービス支配論理」の点からどうなのかなどの点が挙げられます。自宅に専用テレビを買いたす方式は明らかに「モノ支配論理」の範疇にあります。

 

<アップルTVはモノ支配論理のホームクラウド拒否>

 見逃せないのは、アップルテレビなどは「ロケフリ専用テレビ」=ホームクラウドの方向では無く、iTunesでの販売とiCloudでのロッカーサービスやHuluNetflixなどの月次課金などを主とした、広い意味でのクラウド録画の方向に動いている点です。これだと生活者はロケフリ機器に煩わされることなく「サービス支配論理」としてロケフリを享受できます。生活者は何もしなくて良い訳ですね。

 

生活者の自宅にスマートデバイスとしての専用テレビのようなホームクラウド機器を置く方式が果たして生活者に受け入れられるのか、アップルなどが推し進めるクラウド録画のサービス支配方式が支配的になるかがこれからの注目点だと考えられます。

 


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