スマート革命の進展が煽るソーシャルテレビ疲れの秘密
<序文>
一人一台のパソコン+ブラウザーの時代から一人が七台のスマートデバイスを使い分けるスマート革命(ポストPCコンピューティング)時代への変化の中で色々な現象が起こっています。そのひとつであるソーシャルテレビが世界中で大流行です。その背景には食事中にもテレビ視聴中にもスマートフォンやタブレットを手放さないスマート中毒があります。この数字も調査のつど、どんどん上昇するのですが、最近では日本でも実に約8割のモバイル系スマートデバイス所有者がテレビ視聴中にも手放さないと報じられています。中でもスマートフォンの普及の影響はものすごく、ソーシャルメディアを毎日利用する10代―20代の男女は84.3%に上っています。
スマートフォンの中毒にソーシャルメディアの軽い中毒症状が重なってソーシャルテレビが流行しているようです。
その内、疲れが議論されるかもしれません。
★★
Comcast and NBC Put Money, Marketing Into a Social TV App: Zeebox Lands in the U.S
★★Social TV apps soar, more guides appear
米国に上陸した Zeeboxのソーシャルテレビアプリ
<米国でも大流行>
ソーシャルテレビは米国でも大流行です。
ソーシャルテレビの調査をしているBlueFin Labsが2012年の5月―7月に調査した処では、3ヶ月間で75百万から一億のテレビに関する投稿があったそうです。その一年前は千三百万件の投稿ですから、物凄く伸びています。
9月のMTV Video Music Awards ではテレビを見ながらの投稿数が前年比313%伸びました。その背景にはスマートフォンやタブレットの普及があります。
またスマートフォンやタブレットを対象としたソーシャルTVアプリの種類もどんどん増加しています。地上波各局が製作しているものに加えてゲットグルー、ミソ、イントナウなどが知られており、電子プログラムガイドを補完する面白い番組発見の為のソーシャル検索にも活用されています。無論、国内のニコ動型に類似した「ワイガヤ」風の盛り上がりも見られます。
そうした中、英国で評判の二画面方式のソーシャルテレビアプリサービスの Zeeboxが米国に上陸しました。NBCUniversal channel や Comcast Cableが投資しバックアップしています。Time Warner’s HBOもバックアップです。このZeeboxは元BBCのアンソニー・ローズ氏が創業者の一人である為、注目されています。彼はBBCにおける見逃し放送、iPLYAERを定着させ、スマートテレビの英国標準であるYouViewの立役者です。3年ほど前、筆者もロンドンのソーシャルテレビ会議で「日本からの参加なんて珍しい!!」と彼から話しかけられて感激したのを覚えています。
スマート機器のもたらす軽い中毒症状に加えて、知り合いと繋がる事のもたらす快感(フェースブック型)やツイッター型の皆でマラソンを応援する時にもたらされる快感(単純存在効果)などが重なって米国中が軽いソーシャルテレビの中毒症状にかかっているのかもしれません。
しかし米国でもフェースブック疲れなど言われていますので、この流行も今後どうなるでしょうか?
<ミクシィ疲れとソーシャルテレビ疲れ>
今から6年ほど前、「ミクシィ疲れ」と言うブログを書いたことがありました。当時、あれほどの騒ぎになるとは思わなかったのですが、米国のフェースブックにもフェースブック疲れがしばしば指摘されているのでどうやらグローバルな広がりを持った指摘だったのでしょう。
いわゆる行動心理学のオペランド条件付け行動と感情社会学を組み合わせた説明でしたが、「楽しいはずの友達との社交もにわか友達の演技が続けば、義務になり疲れる」と言う感情社会学の説明が受けたようです。
一方ソーシャルテレビの投稿合戦の快感はUstreamやニコニコ動画の昔から皆での盛り上がりへの参加が「快の感情をもたらし、それが何時も欲しくなる。」と言った基礎心理学で説明がつきます。パチンコ屋で皆がチンじゃらチンじゃらと言う音を響かせているのと「同じ快感」ですね。
日テレが金曜ロードショーの「天空のラピュタ」で演出し、ツイッター投稿の記録を塗り替えた「バルス祭り」もバルスの投稿に対応する音を入れるアプリを作れば、あの三倍位は盛り上がったかもしれません。筆者はいずれニコ動も音を入れたり、韓国のアフリカテレビのように画面で光るパーイクルを飛ばすと思っています。
NHKも昨年の紅白ではソーシャルテレビのアプリを用意し、大騒ぎでした。
しかしこの手の「快感」が行過ぎるとゲームに見られる中毒症状、疲れや軽い廃人化が起こってきます。何故なら麻薬中毒と同じで「快の感情を求め続ける」禁断症状が起きるからです。まあ中毒といってもアルコール依存症と同じでセルフヘルプグループができる程ではありませんが。
<テレビ局もアプリ、広告代理店もアプリ>
そうした中、米国も英国も日本もテレビ局や博報堂のような広告代理店もどんどん広告用のアプリを作り上げています。
最近では日本でも音声認識アプリが登場し、テレビCMを見れば割引券がスマートフォンに自動的に届くO2O(オンラインツーオフライン)型アプリの仕組みあります。(米国のショップキック型です。)これに友達との社交を組み合わせれば効果的なマーケティングになるでしょうが、一方でソーシャルテレビ疲れも増すかもしれません。
ソーシャルテレビ疲れ、スマート機器疲れも心理学、マーケティングも心理学が武器です。二つのぶつかり合いによる面白い心理学戦争が見られる時代になりました。