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変化の激しいビジネス環境に、IT及びIT業界はどのように対応していけばよいのか?

ITを考える際の枠組み

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仕事柄、様々な企業のIT担当者の方や責任者の方の声をお聞きしますが、「ITシステムを導入して業務が非効率になった。」「ITシステム導入前は業務に問題があればすぐに改善させていたが、ITシステムを導入してフットワークが重くなった。」という声をお聞きすることがあります。

場合によっては何億ものコストがかかっているITシステムが有効に機能していないということは非常に残念なことです。
当事者にとっては残念などでは済まされないでしょう。
私もIT業界の人間として、このような事がおこらないようにしなければならないと、常々感じております。



さて、なぜこのようなことがおこってしまうのでしょう?
多くの場合、様々な原因が絡み合っていて、個別の事象や問題・課題などを見ていても、なかなか解決にはつながりません。
そこで今回は、ITに関する課題や原因などを俯瞰的に見るため、ITを考える際の枠組みを提示したいと思います。



ITを考える際の枠組み

ITには限りませんが、ビジネスにおいて物事を見る際には、何らかの枠組み(フレームワーク)をもって見るとよいでしょう。
ITというのは技術面ばかりが注目されがちで、ビジネス活動におけるITの位置づけ、企業の中のITの役割、などといった観点があまり語られない印象を受けます。
(私の思い込みかもしれませんが。)

もちろん、ITに関する枠組みは既に多く存在しますが、既存の枠組みを参考にしながら私なりにまとめてみました。

ITを考える枠組み.png
図1.ITを考える枠組み

考え方のベースになっているのはEA(Enterprise Architecture)やBSC(Balanced ScoreCard)です。
出来るだけシンプルにしたいと意識したのですが、若干複雑に見えるかもしれません。

これを見るとITというのはITシステムそのものの話だけではないということがわかると思います。当たり前なのですが。。

以下、何点か補足です。

ITというのは企業の経営戦略や業務・オペレーションと一体であることを意識しなければなりません。
そのため、ITと戦略、業務・オペレーションとのつながりを記載しました。
このつながりの部分は重要なので、具体的にどのようにつながっていくかについては、別途このブログで書いていこうと思います。

業務の部分について、他の枠組みに見られるような「業務改革の推進」とはせず、「業務との整合」としたのは、業務改革・改善はあくまで業務側で行うものであって、ITが行うものではないと考えたからです。
そして「業務との整合」と「IT活用」を分けました。業務と整合したITシステムが実際の現場で活用されているかどうかは別問題だと考えたからです。

「IT全体構造」とは企業全体のITアーキテクチャ(EA的なアーキテクチャ)のことですが、個別のアプリケーション(データも)もここに含めて考えています。
アーキテクチャと個別アプリケーションは別物なので、本当は分けた方がよいかもしれません。
ただ、普段ITについて考える際は、どうしても個別のアプリケーションの良し悪しに目がいきがちです。
なので、全体像を考える際に個別アプリケーションの良し悪しに目を奪われないように、あえて「IT全体構造」の中に入れて考えました。

この枠組みに沿って対策を講じることで、ITで効果を創出できると考えています。
※そもそもITの効果をどう定義するかというのは非常に重要なことなので、別の回に書こうと思います。


この枠組みではITの領域は11個(ちょっと多いですね)あるのですが、各領域の内容が重要です。
細かくなりますが、以下のように考えました。

11の領域の内容.png
図2.11領域の内容

これについては、まだまだ見直しの余地があると思います。
各領域の内容に何を含めるかは随時ブラッシュアップしたいと思います。


枠組みに沿って考えてみる

例えばIoTについて、この枠組みにあてはめて考えてみましょう。
考える順番はどこからでもよいと思います。
考える人の立場や役割によって変わってくるでしょう。
「IT戦略からはじめるべきだ」という意見もありますが、私は必ずしもIT戦略からでなくても良いと思います。
ITのテクノロジーが経営戦略に与える影響もあると考えています。これも面白いテーマなので、そのうちブログに書こうかと思います。

さて、IoTについて。
まず、IoTといえば現在はモノとの通信部分と、取得したデータを活用するアプリケーション部分が注目されます。
通信の技術面は「IT基盤」、アプリケーションはこの枠組みでいうと「IT全体構造」に位置付けられます。

しかしIoTの真髄は、IoTを活用して業務プロセスを改革することにあると考えられます。
そのため、IoTを活用して業務をどのように変えるのか、それに必要なIoTのアプリケーション、基盤はどのようなものかを検討しなければなりません。

IoTを活用した業務プロセスを実現するには、組織やIT人材も従来通りとはいかないでしょう。
そして、戦略面、投資、セキュリティなどのリスクについても考慮が必要です。


このように、企業内においてIoTを導入して効果を創出するには、ITの技術面だけではなく、枠組みにあるように多面的に考えなければなりません。

これは当然IoTに限らず、企業内における全てのITシステムに言えることです。


今回はITを考える枠組みについて提言しました。
今後は基本的にこの枠組みに従って様々なテーマでブログを書いていきます。
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