【書評】『ソーシャルマシン M2MからIoTへ つながりが生む新ビジネス』
ちょうど1年前の4月に、"Social Machines: How to Develop Connected Products That Change Customers' Lives"という本をご紹介しているのですが、その邦訳が4月9日(Kindle版は4月10日)に出版されることになりました。タイトルは『ソーシャルマシン M2MからIoTへ つながりが生む新ビジネス』。僭越ながら、翻訳を担当させて頂いております。
「ソーシャルなマシン」とはいったい何なのでしょうか。なれなれしく話しかけてくる自動販売機?牛乳の賞味期限が切れたことをツイートする冷蔵庫?実はそれほど外れてはいません。ソーシャルマシンとはネットに接続し、情報を送受信する機械のこと。温湿度計が通信できるようになったら?病院にある車椅子をネットに接続するには?スケートボードや自転車がネットにつながったら?などなど、さまざまなソーシャルマシンの事例が登場し、それが切り開く新たな可能性を考察。機械と機械、そして機械と人間との間に新たな関係が築かれ、ネットを介して機械の力を借りることが自然に行われるような世界が描かれています。
と書くと、IT系の仕事に携わっている方々のアタマには「M2M」や「IoT」といったキーワードが浮かぶことでしょう。その連想は正解で、M2MやIoTで何ができるようになるのか、どんなメリットがあるのかを利用者の側から描くためのコンセプトが「ソーシャルマシン」であると言えると思います。これまで技術的な視点で語られることの多かった「機械がネットに接続する」という状態に対して、具体的なメリットやニーズを明確にした上で考察を行っています。
さらに本書は、SF的な未来像を夢想するだけの本ではありません。ソーシャルマシンによってビジネス面ではどのような利益が生まれるのか、それを実現するにはどうすればいいのかまでを考察する、極めて実践的なハウツー本としての側面も持っています。単に「革命が起きる!」と大騒ぎして、数年後にはブームが去っている、そんなエンターテイメント型ビジネス書ではないのでご安心を。
以前の書評でも書きましたが、特にソーシャルマシンを捉えるフレームワークについては、この分野でビジネスを立ち上げようとしている方々にとって参考になると思います。例えば本書では、ソーシャルマシンは物理的な機体と、デジタル情報で構成されたイメージ=アバターという2つの体を持つと捉え、前者だけでなく後者をどうデザインするかが重要だと指摘し、具体的なアドバイスを提示しています。またソーシャルマシンの顧客について、「物理的なモノを手にする直接の利用者」「アバターを活用して新たなサービスを生み出す開発者」「開発者が生み出した新たなサービスの利用者」の3種類が存在すると捉え、それぞれにどのような対応を行うか、また彼らの関係からどのようなビジネスモデルを考えれば良いのかなども解説してくれます。
ということで、「M2MやIoTなんて今さら解説されるまでもない」と考えている方こそ、本書を手に取ってみてほしいと思います。そうした技術をどう具体的なビジネスで役立てるのか、ヒントが得られることでしょう。もちろんこれから5~10年後にどのような社会が訪れているのか、近未来を予想してみたいという方も楽しめる内容になっていますので、ぜひご一読を!
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オルタナブロガーの松井真吾さんに書評を書いていただきました。ありがとうございます!
■ 機械がおもてなしの心を手にする日は来るのか: 書評 – ソーシャルマシン (IT向上化計画)