アクセス解析される世界
ニューヨークに拠点を置くIMRSVという会社が、市販のウェブカムを使い、画像から来店客層の分析ができるというサービス"Cara"を始めたそうです。しかもその料金というのが、カメラ1台あたり$39.95/1ヶ月という価格破壊なのだそうで:
■ New software brings face detection to stores and streets for $40 a month (The Verge)
25フィート(約7.6)先から顔認識が可能で、年齢層と性別を90パーセントの精度で識別可能とのこと(複数人を同時に認識することもOK)。どこぞで話題になったような、コンビニで年齢確認ボタンを押す/押さないという問題にも応用できるかもしれません。実際にニューヨークの5番街にあるリーボックの店舗で、このCaraを使った解析が行われているのだとか。
でも、お高いんでしょう?
Off-the-shelf face detection software is becoming more common, but Cara is one of the most affordable at $39.95 per camera. It’s easy to download from IMRSV’s website and install, even on $150 computers and cheap webcams. IMRSV is also providing a free API so developers can build apps using Cara.
市販の顔認識ソフトも一般的な存在になりつつあるが、Caraはカメラ1台あたり39.95ドルという、最安値のサービスのひとつだ。IMRSVのウェブサイトから簡単にダウンロードしてインストールすることができ、150ドルコンピュータのような低価格PCとウェブカムを使っても走らせることができる。またIMRSVは無料APIを提供しているので、開発者はCaraを使ったアプリを開発することが可能である。
ということで、カメラごとの課金体系となりますが、何と月額約4,000円という安さ。さらにGoogle Analytics風のログ解析メニューも用意されていますから、カメラがあまり必要ない小規模な小売店で、来店客の動向分析を始めるのにちょうど良いかもしれません。
そういえば今日はこんな話もありました:
■ Watch Game|Life | New Xbox One - Kinect: Exclusive WIRED Video
新しいXbox"Xbox One"と同時に発表された"Kinect 2"の性能について。もともとKinectはSDKが公開されていて、海外で「画像解析でこんな面白いことしてみました!」というニュースがあるとお決まりのように「入力端末にKinect使ってます!」という流れになっているのですが(例えばKinectを安価な3Dスキャナに変えてしまうなどという話も)、今回の性能アップ+Xbox Oneから本体に同梱されるということで、その流れが加速しそうです。先ほどのCaraもAPIを公開していましたし、画像解析をどう実現するかというよりも、手元にあるハード+ソフトでどんな面白いことを実現するかという話の方がさらに重要になってゆくのでしょう。
そうなると、ウェブサイトを開設していればアクセス解析を行うのが当然なように、何らかの店舗や施設を管理している人には「なんで来訪者の分析しないの?」というプレッシャーがかけられるようになるのかもしれません。いままで簡単にログが取れるのはウェブの世界だけでしたが、現実の世界も同じぐらい簡単に行えるようになるわけですから。しかもクッキーを使わなくても「顔」で個人を識別することができ(WIREDのビデオにも、一度ログインしたことのある人は顔認識でサインレスのログインが可能になるというシーンが出てきました)、クッキーを削除する的な対応も不可能であることを考えれば、「現実解析」の方が重宝されるという状況も出てくるでしょう。社内でウェブ解析を担当していた人が、気がついたらリアル店舗全体の状況を分析する要職に就いていた……なんて話も出てくると思います。
ウェブを見ればアクセス解析され、読書すれば電子書籍端末経由でログが取られ、街を歩けば映像から分析が行われる時代。購買履歴だってポイントカードで記録されているし、社員や学生の行動記録をIDカードや交通系カードで取るという話もごく普通のことになっています。とっくの昔に、ネットとリアルを分けるのはナンセンスになっていて、現実世界はすべてデジタル化されてゆくのかもしれません。