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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

思い出が宿る椅子

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メルヘンなタイトルですが、ちゃんとITネタだったりします。

中古品を買ったときに、「前の持ち主はどんな人だったんだろう?」と想像することはないでしょうか。クルマや家具、本やアート作品などなど。小さなキズが付いているのを見て、「ここは落として付けてしまったのかな」と考えてみたり。そんな楽しさを、RFIDで増してしまおうというアイデア:

RFIDタグを付けた、アルテックのセカンドサイクル家具 (excite.ism)

フィンランドの家具メーカー、アルテック(Artek)が販売している「RFIDタグ付きのリサイクル家具」について。要は食品のトレーサビリティと同じイメージで、RFIDタグで家具の歴史(作られた場所や歴代のオーナーなどの情報)を記録しておこうというもの。現在は同社の椅子が対象となっているようです。

公式ページ(Artek 2ndCycle)には、以下のような解説があります:

A coded RFID tag embedded in each 2nd Cycle item records the furniture's history, stories, as well as information about its origins. The tag can be read by mobile phone, revealing an internet link to the particular item's history, allowing also new owners to upload their own stories..

それぞれのリサイクル製品に埋め込まれているタグには、家具の歴史、物語、出身についての情報が保管されています。タグは携帯電話から読み込み可能。読み込むとインターネットのリンクが表示され、これまでの歴史を見ると共に、新しいオーナーが自分自身のストーリーを書き込むこともできます……

おぉ、過去の情報を確認するだけではなくて、自分の情報を追加することもできるのですね。逆にその家具を手放した人が、今のオーナーがどんな人か確認する、という体験も可能になりそうです。もちろんプライバシーなど様々な問題があると思いますが、例えば娘に買ってあげた椅子が「以前の持ち主も、この子と同じぐらいの女の子だったのかぁ」と分かったり、「あの椅子の新しい持ち主も、この子と同じ遊び方をしているのかな」と想像できたりしたら楽しいかも。

この仕組み、家具だからこそ可能なのかもしれませんが、様々な中古品に応用できるのではないでしょうか。もしかしたら、「過去の歴史を買う」「歴史をつないでいく」ということが新品を買う以上の価値と見なされるようになるかもしれません。それがモノを大切にする精神につながっていったら、テクノロジーの進歩が過去を守る、という稀な事例になるかもしれませんね。

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