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多様性の可視化

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最近コンビニなどでお菓子売場に行くと、こんなチョコレートを売っているのを見かけませんか?


明治製菓が発売した「ショコライフ」というチョコレート。全8種類なのですが、それぞれにテーマカラー(玉露なら緑など)が与えられていて、色鮮やかで売場でも一際目立っています。

この「何色も用意する」という手法、実は周到に練られた戦略であったことが昨日の日経MJで解説されていました:

■ 色仕掛け 手が伸びる -- カラフル商品 目立つ売場 (日経流通新聞 2006年10月25日 第3面)

記事によると、ショコライフが8種類になったのには「一列に並べた際に一般的な陳列棚の横幅に相当させる」という理由があったそうです。一段にずらっと8色が並ぶと、非常にカラフルで目を引くのだとか。ただし一段まるごと割いてもらうのは難しいので、吊り下げ型など10種類以上の什器を用意したとのこと。その結果、約9割の店で8種類すべてを仕入れてくれたそうです。

この戦略がどのような結果をもたらしたか。「4種類で10品を置いた店舗」と「8種類で10品を置いた店舗」の売上げを比較した場合、8種類置いた店の方がなんと2.3倍を記録したそうです。種類を多くすることによって、消費者に対するアピールが強まったことが明らかになったわけです。

さて、ここでMJでは売上げが伸びた理由を「カラフルで目立ったため」と評しているのですが、果たしてそれだけが理由でしょうか。実は以前から参照している本『ロングテール』の中で、以下のような言及があります:

でもヨーグルトの種類を一つ二つ増やしたら販売数が増えたとか、そんな事例を扱う研究はいくつか見られる。そうした「多ければ多いほど」研究で比較的有名な論文の一つが『選択の魅力(The Lure of Choice)』だ。銀行、ナイトクラブ、カジノで実験をおこない、その結果を分析したところ、消費者が特定の選択肢を手に取る回数は他にも選択肢がある方が多くなることがわかった。概して消費者はスクリーンの数が多い映画館に行きたがるし、テーブル数の多いカジノを好む。選択肢を多く与えられるほど、いらないものに出会うリスクが減ると感じるのだ。

すなわち種類が多いこと自体が、消費者を引き付ける誘因になる可能性があるということです。この効果が、ショコライフでも起きていると考えられないでしょうか。

色によるパッケージの区別は、遠くからでも「種類がたくさんあること」を示すシグナルとなります。それが「カラフルなことによる目立ち効果」と相まって、ショコライフの種類を多く置いた店での売り上げ増をもたらしたのではないでしょうか。仮にショコライフが味を変えず、パッケージだけ多様化していたとしたら、実験で2.3倍もの差が開くことは無かったのではないかと想像します。

「多様な種類を用意し、多様性が一目で分かるように可視化(色を変える、形を変える、分かりやすいロゴを貼り付けるなど)した上で、全種類を一箇所に集める(多様性をアピールすると同時に、その場で消費者が選択できるようにする)」ことが売上げアップにつながる -- それがショコライフの示している教訓だと思います。で、気になるのが最近のキットカットシリーズ。最近お菓子売場に行くたびに新しい味が出ているのですが、不思議なことに「また新種類?」と飽きを感じます。ショコライフに倣えば、新しい種類を次々に発表するよりも、一度に発表して売場に揃えるという手法の方が売上げが上がるということになるのですが、どうでしょうか。

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