日本以外・・・
「日本沈没」という映画が公開中です。原作はもちろん、小松左京氏の『日本沈没』。以前も映画化され、今回の作品はリメイクとなります。
・・・とここまでは多くの方がご存知だと思いますが、「日本以外全部沈没」という作品があることはご存知ですか?僕も最近知ったのですが、タイトルから分かるように「日本(北方領土、竹島、尖閣諸島など微妙な土地も含む)以外の国々がすべて沈没してしまう」という内容。原作のまるきり逆となっています。実はこちらにも原作『日本以外全部沈没』があり、著者は筒井康隆氏。映像化はまるで「日本沈没」のリメイクに合わせたかのタイミングですが、公式サイトによれば、企画が出たのは「日本以外全部沈没」の方が早かったそうです。
「日本以外全部沈没」はもちろん「日本沈没」のパロディなのですが、興味深いテーマを扱っています。未見なので恐縮ですが、公式サイトからの情報でストーリーを追ってみると、
- 「日本以外」が沈没してしまうことによって、多くの外国人が日本にやってくる。
- 人口増加により、食糧不足・失業率上昇・犯罪率増加などの問題が発生。
- 政府は超法規的に「不良外国人」の取り締まり・国外追放を実施。
- 次第に日本人は特権階級として増徴し、外国人を搾取するように。
- そうした状況に、外国人たちの不満は爆発寸前となっていた・・・
という内容、とのこと。筒井氏がどこまで実際の社会問題とオーバーラップさせることを願っているのかは分かりませんが、外国人労働者の問題と絡めて考えることが可能でしょう。実際、少子高齢化により日本は労働力を外国人労働者に頼らなければならなくなる、という予測もありますし、現実に対する問題提起としてこの作品を鑑賞することができると思います。
こうした「あるシチュエーションの逆のシチュエーションを考えてみる」というのは、有意義な発想法かもしれませんね。例えば同じ映画で考えると、かつて怪獣や怪人が登場する作品では、「モンスターが人間を襲う」というのがお決まりの構図でした。しかし間もなく第3部が公開される「X-MEN」では、「人間から迫害を受けるミュータント」の姿が描かれています(最大の目的は超能力者同士の戦いをエンターテイメントとして描くことですが)。このアイデアを借用して、「主人公以外の登場人物はすべてスーパーマンで、スーパーマンの能力に合わせて設計されている社会(階段の無い高層ビルなど)で生活に苦しむ主人公の話(=現代のバリアフリー問題?)」や、「やむを得ない事情によって地球にやってきたのに、有無を言わさずウルトラマンに殺される怪獣の話(=現代の熊問題?)」などといったシチュエーションが考えられるかもしれません。
ところで「日本沈没」と「日本以外全部沈没」、問題としてはどちらが深刻なのでしょうか?「頼る側」と「頼られる側」、2つの視点を考えなければならないわけですが、こうした複眼的な視点を持てるというのも、正反対のシチュエーションを考えてみる利点かもしれませんね。僕やはり、日本は沈没しないで欲しいと思ってしまいますが。