タレントマネジメントにおいて何をタレントとして管理するのか
タレントマネジメントを推進していく上で、何をタレントとして把握し、管理していくのであろうか。タレントを管理・把握していく上では2つの側面から考えると良いであろう。ひとつは「ビジネスで必要とされる能力」。もうひとつは「組織や人事上のイベント」である。
「ビジネスで必要とされる能力」
タレントに関する情報としてまず考えられるのが、「ビジネスで必要とされる能力」である。この「ビジネスに必要とされる能力」は、概ね以下の通り分類される。
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①「資質・適性」
②「価値観・考え方」
③「行動特性」
④「スキル」
⑤「知識」「経験」
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①「資質・適性」
「資質・適性」は、先天的、また場合によっては幼少期に生まれ育つ環境の中で培われるものである。ビジネスの現場では、「営業に関する資質・適性がある」「ITに関する資質・適性がある」というように、ある分野について、その「資質・適性」があるかどうかと評価されることが多い。また、この「資質・適性」は、基本的に先天的に形成されるものであるため、採用段階の見極め時にそれらの情報を収集している場合が多い。
②「価値観・考え方」
「価値観・考え方」は、幼少期の日常の生活を通して、保護者に褒められたり叱られたりといったやりとりを繰り返す中で、「これは良い」「あれは悪い」と本人の判断が定まり、一定方向に形作られるものである。「資質・適性」と同様に、採用段階に行われる適性検査などを用いて情報収集されている場合が多い。
③「行動特性」
「行動特性」とはコンピテンシーとも呼ばれ、ある目的のためにその人がどのような行動をとる傾向にあるのかを示したものである。優れた業績をあげている人の行動を細分化していけば、業績に直接関連するいくつかの特徴的な行動が見えてくる。それらの「行動特性」を評価項目にし、業績に直結する行動を促している会社も多い。
④「スキル」
スキルには、ヒューマンスキル、テクニカルスキル、コンセプチュアルスキルの3つがある。対人関係において発揮される能力をヒューマンスキル、ある特定分野の高い知識や技術をテクニカルスキル、物事を構造的にとらえ複雑な事象を概念化することにより、物事の本質を把握し、解決する能力をコンセプチュアルスキルと言う。これらのスキルは、会社組織で定期的に行う評価情報や研修等の人材育成の報告書・レポート、また採用時に用いている評価ツール等によって収集している情報があるであろう。
⑤「知識」「経験」
ここまでのビジネスで必要とされる能力に加え、タレントを把握する上で重要な情報に「知識」と「経験」がある。「知識」には、ある分野での活動や取り組みを通して、また免許や資格(及び検定)等の取得を通して得た、可視化・言語化して表現できるもの(形式知)と、可視化・言語化して表現できないものの、「経験」を通して得た知見(暗黙知)がある。「知識」「経験」に関しては、取得している資格、またこれまでの職歴や異動履歴等の情報があるであろう。
「組織や人事上のイベント」
前述の「ビジネスで必要とされる能力」は、「組織や人事上のイベント」から把握すると良いだろう。「組織や人事上のイベント」から考えると、採用時・入社時に実施する適性検査に始まり、教育・研修などの育成の場、上司と共に行う評価、昇降格の履歴、異動や出向等の記録、いくつものタレントに関連する情報にいきつくであろう。更には、履歴書・職務経歴書、入社時の面談情報、研修等の学習履歴、評価レポート等、「組織や人事上のイベント」から考えると、社内には実に豊富な情報があることが分かる。
「ビジネスで必要とされる能力」や「組織や人事上のイベント」に沿って、タレントに関連する情報を把握し、管理することで従業員個々のタレントを明らかにしていく。これらは情報がひとつの部署のまとまっていることは少なく、情報が分散している場合が多い。タレントマネジメントを推進していく上では、まずこれらのタレントが、どこにあり、どのような状態で保持されているのかを把握する必要があると言えるであろう。
これらのタレントに関連する情報を収集する際には、ふたつ注意点がある。ひとつめは、今あるものをまず把握することである。全てを網羅的に収集しようとすれば、それ自体が目的化してしまい、本末転倒になりかねない。ふたつめは、ビジネスで必要とされる能力の区分を明確に定義することである。本コラムでは、前述の通り、「資質・適性」、「価値観・考え方」、「行動特性」、「スキル」、「知識」「経験」と区分して解説してきた。これらの「ビジネスに必要とされる能力」は、それぞれの項目に対する論者や適性検査、評価のための手法によって、区分がまちまちであると共に、重複している場合も多い。それぞれの項目に対する論者の考えに基づく区分や適性検査等の区分を参考にしつつ、自社のタレントの管理・運用の観点から、自社における区分を明確に定義する必要があると言えるであろう。この自社の区分の定義が明確でない場合は、それらの区分に振り回されてしまい、収拾がつかなくなることも少なくない。
代表取締役社長 兼 CEO 大野 順也
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