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【ベーシック・インカム】に関する質問と回答

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ベーシック・インカム導入を議論する時に最初にあげられるのが、ベーシック・インカムが企業や金持ち優遇になるのではないか、ベーシック・インカムがあると人は働かなくなるのではないか、という疑問です。

Q.消費税が唯一の税源だとすると、低所得層は現在よりも大きな打撃を受けるのではありませんか?

A.そのためにベーシック・インカムを導入するのです。その額は、個々の市民に最低限の生活を保障しうる額、人間的な生活を可能にする額でなければなりません。もちろん付加価値税(消費税)も支払うことができる額です。付加価値税は唯一公正で、かつ現実的に意義のある税です。たくさん消費する者が、国家財政により多く貢献することになります。

Q.ベーシック・インカムのモデルが目指すのは、なによりも完璧な企業家天国なのですね。その結果、金持ちはいっそう豊かになるというわけですね。

A.私自身企業家ですから、よく承知していますが、企業は税をほとんど払っていないに等しいのです。じつは企業家はみな税負担をそっくり価格に上乗せしているのです。だからこそ、私の社会構想は被雇用者にとっても天国だと思いますよ。そうなれば、企業家は権力を失うでしょう。労働組合も、政治家も、同じくその権力と影響力を失うでしょう。一方、市民は誰もが尊厳と安全を獲得し、さらに現実的な自由を獲得するでしょう。つまり、「No」と言える自由です。

Q.ベーシック・インカムがあっても、なおドラッグストアのレジ係になりたいというひとがいるでしょうか。

A.新たな収入を得る必要はないにもかかわらず働いている人びとはじつにたくさんいます。彼らが働いているのは、いつも他の人たちといっしょにいたいから、つまり今日風の言い方で言えば、ネットワークのなかにいたいからなのです。

Q.それでも、誰もやりたがらない仕事が残るのでは?

A.そういう仕事には高額の給与を払うか、あるいは、人手に代わる機械を発明しなければならないでしょう。

1つのグループの意見が賛成または反対で統一されているわけではないことが、ベーシック・インカムを巡る議論の特徴です。

「すべての個人への無条件な所得の保障」と聞くと、人はそれを社会主義的な考え方ではないかと受け止めるのではないか。講義や講演で私の話を聞いた学生や市民の方々の最初の反応もそうである。しかしながら、ベーシック・インカム構想にはいろいろな立場の人たちが賛成したり反対したりしている。もう少し正確にいうと、賛否が立場によって鮮明に分かれるのではなく、労働者にも賛成者と反対者がいる、フェミニストにも賛成者と反対者がいる、エコロジストにも賛成者がいるし反対者もいる、そして経営者にも賛成者がいれば反対者もいるという具合なのである。

小沢修司(京都府立大学)

社会学博士のザーシャ・リーバーマンは、この本の中で以下のように述べています。

多くの人びとがベーシック・インカム理念に対してたいへんな不快感を抱くとすれば、それは今日まで、民主主義的な市民文化、基本的な所得保障、生産性向上、これらが渾然一体となって混じっているためである。ある者にとっては、所得保障を要求することからしてすでに共産主義を意味し、また別の者にとっては、生産性向上は彼らの反資本主義的あるいは反企業的なパトスにとって我慢ならないもの、つまり新自由主義(ネオリベラリズム)的な考え方のあらわれだった。これらの批判のなかには、各陣営間のあらゆる相違にもかかわらず、隠れた親近性が見てとれる。すなわち、個人には、市民共同体と同様に重きがおかれていないことであり、両者とも信頼しえないものと考えられている点である。

無条件のベーシック・インカムの理念が拠って立つ基盤は、個人への信頼です。ヴェルナー他の推進論者は、ベーシック・インカムの導入によって企業、労働者を問わず経済全体の活性化がすすみ、ひいては人間の発達につながる社会へと発展していくことについて確信を持っています。

賛成反対いずれにしても、この本に書かれていることがベーシック・インカムのすべてではありません。実際の導入までには、現行制度とのすり合わせや段階的な軟着陸など、さらに議論を重ねて検討する必要があります。

次回の最終回は、日本でベーシック・インカムは実現するかについてまとめます。

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