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【ベーシック・インカム】消費税が50%になったら

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それでは、ベーシックインカムは財源の面で実現可能なのでしょうか。

ヴェルナーは、法人税や所得税などを廃止しても、消費税率を45~50%にすればベーシックインカムは実現可能であると主張しています。私が言うまでもなく、日本の今の消費税率は5%です。これが45~50%になると言われると、思考停止して拒絶反応が出そうです。

ここで企業と企業で働く給与所得者の、お金の流れについて考えてみたいと思います。

まず企業です。ご存じのように、企業の利益を一番シンプルな形で表すと、

利益 = 売上 - 原価

になります。利益には法人税がかかります。売上にはその企業が受け取った消費税が、原価には支払った消費税が存在します。これらを式で表現すると、少し乱暴ですが、以下になります。

税引後利益 + 法人税 =

税別売上 - 税別原価 + (受取消費税 - 支払諸費税)

法人税の税率は利益(課税所得)の約30%です。今、仮に80億の税別原価で100億の税別売上の会社があったとすると、この会社の税引後利益はいくらになるでしょうか。(例題をわかりやすくするため、かなり簡素化しています。地方税は考えません。ご了承ください。)

税引後利益 + 法人税 = 100億 - 80億 + (5億 - 4億)

税引後利益 × (1 + 0.3) = 21億

税引後利益 = 21億 ÷ 1.3 = 16.1億

この時、企業が納める税金は、法人税4.8億と消費税の受取と支払の差額1億の合計5.8億になります。

ベーシックインカム導入で法人税が廃止されて消費税が50%になると、どうなるでしょうか。

税引後利益 = 100億 - 80億 + (50億 - 40億) = 30億

ベーシックインカムを導入すると売上と原価も変わってくるはずですが、いくらになるか予想できませんし、この例題で必要なのは売上と原価の差額だけですので、ここでは考えません。

この例題では、税引後利益は16.1億から30億になって1.86倍に増えている一方で、納税額は5.8億から10億で1.72倍にしか増えていません。つまり、消費税が50%になっても、法人税が廃止されれば、企業の手元に残る利益は今より増えることになります。企業がこの利益を使って何かを買えば、50%の高い消費税がかかってくるわけですが、お金を使う時に初めて税金がかかるのが消費税の特長です。

会社の経営にとって、この違いは非常に重要です。例えば、儲かりすぎている会社は、税引き前の利益を減らすために、必要もないのに社用車に4ドアのベンツを買って「節税」しています。税金で持って行かれるくらいなら使ってしまえということなのですが、これでは会社の基礎体力は強化されません。

消費税に一本化されると、利益を社内に留保しておいても税金はかかりません。この利益は必要な時まで貯めておいて、設備投資や研究開発に使うことができます。金融危機になっても、手元資金が厚ければあわてることはないでしょう。

それでは従業員の給与はどうなるでしょうか。

年収600万の社員を想定します。今の所得税の税率は、いろいろな控除を引いた後の金額によって5%から40%まで幅があります。額面の年収が600万の場合、税率は20%、所得税は約43万です。仮に税引き後の手取りを557万とします。

ベーシックインカムで月20万支給されるとすると、(訂正追記:)1人月20万支給されるとすると、夫婦2人で年間480万が支給されることになります。この分は会社からの給与が減ります。つまり給与は120万(600-480)になります。ただし、所得税がなくなるため、手取りは120万がそっくり手取りになります。ベーシックインカムと合わせると600万になり、こちらも手元に残る金額は増えます。

何か不思議な気がしませんか。

ルイク(注 インタビュアー):

しかし、馬鹿を見るのは-いつもそうであるように-低所得者ではありませんか。貧乏人は相対的にもっとも多く税を支払うことになります。

ヴェルナー:

いいえ。ここで注目していただきたい点は、まず第一に、付加価値税(日本の消費税に相当)は社会的な観点から設定できること。第二に、商品は高くならないことです。たとえば、メガネの価格が100ユーロだとしましょう。そのうち16ユーロが付加価値税で、84ユーロが商品の価格です。この84ユーロには、34ユーロ分の他の税金がすでに隠されており、実際の商品価値は50ユーロなのです。したがって、50パーセントの付加価値税を導入するというのは、商品価格に含まれる税の割合をはっきりと明示することにほかなりません。私は、付加価値税を一挙に50%に上げるべきだとは言いません。それには数年かかるでしょう。

企業が払った法人税は、見えない形で製品やサービスの価格に転嫁されています。個人の所得税は、天引きされているとあまり意識することはないと思います。

消費税率が50%と言われると拒絶反応が出そうですが、実は、現時点でも、給与所得者は給与の20%の所得税を払った残りで、見えない法人税が含まれた商品を、さらに5%の消費税を加えて買っているのです。

次回に続きます。

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Comment(10)

コメント

13時15分41秒

理想的に運用されて構成員が広い視野に基く真っ当な行動を取るという前提ならうまくいくかも知れません。

今の日本では、このまま適用するとある意味、今以上に格差の拡大と固定化を進めることになりそうです。
相続税も資産と資産が生む収益への課税もないので資産家には非常に優しく末代まで楽勝、資本家は労働報酬を力関係だけで幾らでも切り下げられるので一度転落すると食い扶持だけは保障されるかわりに、這い上がるのは非常に困難になりそうです。
高度な教育や医療は一度落ちると二度と手の届かないものになり、そうした転落の恐怖にかられて権力を握った側は形振り構わぬ自己防衛に走りそうです。
そのために下から這い上がるのを困難にする理不尽なシステムが横行するでしょう。
そうして一般人の手に入れられる教育や医療はますます低い水準に抑えられていくでしょう。
一般人はあきらめて底辺の生き方で満足するか不安定なプラスアルファの為に過酷な労働に晒される者に二分されるでしょう。
今の風潮だと殆どがあきらめて社会の競争力が低下→余裕が無くなりベーシックインカム水準や労働報酬の切下げ
といった悪循環になりそうです。
こうなると恐らく鎖国指向と衰退も加速していきます。
資産価値も低下して途上国並の比率で生き残る一握りのエリート以外は転落する一方になっていくでしょう。

社会における信頼の回復と目指すべき方向性を決める上での原理原則についての合意形成といった、前提となる社会条件の大幅な改善がなければ一見まともそうな制度もこんな風に運用され得るということです。

実の所、精神面も含めた社会のリセット願望と大差がないという評価も可能です。
表面的に資本主義と民主主義の制度を導入したものの、健全に機能していない日本の本当の問題点から目を逸らしているとも言えます。

単純な仕組、単純な税制が良いというのは単純な数式で説明される物理法則のような美しさはあります。
ですがそれが最善であるというのはただの信仰にすぎません。

> 構成員が広い視野に基く真っ当な行動を取るという前提
まさにこのあたりが重要だと考えます。ヴェルナーの基本は性善説のようです。
ヴェルナーの考えでは、相続税に触れられていません。もともとドイツの相続税はどうなっているんでしょうね。
財源を相続税に求める考え方もあります。
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50907051.html
いずれにしても本気でやる時は、現行の制度との調整がかなりたいへんそうです。

melody

こんにちは。
ヴェルナーさんは、消費税が50パーセントでも、商品の価格は高くならない、
と仰っています。

このことを、よく理解したいので、よかったら教えて下さい。

例えば、日本で消費税抜き価格が100円の商品があるとします。
この商品に関わっている税を、すべて引いた金額が70円。
その70円に50パーセントの消費税 (35円) を足すと、105円。
つまり現在の消費税5パーセントの価格と同じになる。

このような理解の仕方は、正しいでしょうか? 間違っているでしょうか?

テクネコ

計算上はそうなりますね。
実際に導入する際に何パーセントにするかは要検討ですが、買う側として払える値段があるので、そちら側からも値段に対して圧力がかかるでしょう。ですので、50%になったからと言って、そのままモノの値段が上がるわけではないでしょう。

上の議論と関係あるかどうかわかりませんが。。。

たとえば、
大手カメラ屋さんのポイント還元。

もし「100%還元」を実施したとしても、
商品がロハになるわけではありません。

1000円の商品に1000ポイントつけて、
次回の買い物で1000円分の商品と引き換えるとすると、
けっきょく1000円の売上で合計2000円分の商品を
渡すわけですので、50%OFFということになります。

もし「100%還元」を実施した場合は、
同様に約33%OFFということになります。

> もし「100%還元」を実施した場合は、
> 同様に約33%OFFということになります。

失礼しました。
上記は、「50%還元」と書くところを誤記してしまいました。

kyunkyun

テクネコさんの6回に渡るヴェルナーの消費税案の紹介、
著書からの引用も含めて、とても分かりやすいので、ときどき他所で紹介させて頂いています。
ところで、このページで一箇所だけ、よく分からなかった所があるのですが、

>ベーシックインカムで月20万支給されるとすると、年間480万が支給されることになります。

という所で、なんとなく計算が合わないように感じたのですが、どうなのでしょう?

kyunkyunさん、ご指摘ありがとうございました。本文に訂正しておきました。
1年以上前に書いた記事ですが、このところベーシックインカムへの関心が高まりつつあるようです。

谷口英之

予め月20万支払われたとして、年収1000万円の人は損をする。年収480万以下の人は得をする。そして税金を消費税に一本化させて50%まで伸ばす。と、こんな感じでしょうかね?そうすれば確かに格差は是正されますね。

谷口英之

今の所得だと、税金により収入が減らされるがベーシックインカムを取り入れると支払われる金額と年収から引かれた分だけが給料として残ると言うわけですか。実に興味深いですねこれ。そして全ての税金を消費税に一本化させるという算段は画期的ですね。年収が多くても所得税として減税されなく最低限の生活費も保障されると言うのは興味深い。

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