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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

今の自分と比較したらかわいそうなのかも。

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先日、あるところで、若手社員の育成を担当するOJTトレーナーの方たちとお話しする機会がありました。

「新人に”どうなりたいの”といっても、なんか、うーん、とか、むむー、とか言って、特に、”こうしたい”も”こうありたい”もないみたいなんですよね」
「ここで何をしていきたいのか、自分が何を得意にしたいのか、ってちゃんと考えてないみたいなんだ。尋ねてもちゃんと答えられないんだ」
「なんとなく日々を過ごしているような」
「やる気があるのか、ないのかもよくわからないし」

と言った発言が続きました。 別に愚痴っているというのではなく、「なんとか目標を持って、元気に活躍してほしいなあ」という”親心”から出てくる言葉として、です。

ただ、これ、新入社員に酷な注文ではないかしら、とも思いました。

自分のことを思い起こしてみると、入社1年目から「何をしたい」「何を得意なヒトになりたい」などと明確になかったし、とにかく、日々、学ぶことが多く、必死に先輩をおっかけて、先輩の言うとおりにしているだけで、精一杯だったからです。

これが得意、とか、この事だと明るく前向きに取り組める、と思えるものが出来てきたのは2年目とか3年目とか。ものによっては5年目くらいとか。

そこで、上記の方たちに尋ねてみました。

「確かにそうですよねぇ。とはいえ、皆さん自身が新人の時、明確に”これがやりたい””これを得意分野として育てる”ってありました? あったかも知れないけれど、先輩に訊かれて即答できましたか?」
「内面はともかく、端からみてもわかるような、やる気満々な様子で日々過ごしていましたか?」

すると、顔を見合わせて、

「そういわれてみたら、自分だって、何をしたい、何になりたいなんてなかったか。1年目は」
「いや、あったと思うけど、言葉で表現できたか、というと怪しいな」
「そうだね、必死ではあったけれど、他人から見て”やる気満々”の風情を漂わせていたか、というとそうでもなかったかも」

とおっしゃいました。

後輩を見るとき、つい、今の自分の「メガネ」を通してしまうもの。

でも、目の前の後輩と 10年前なのか20年前なのかはわからないけれど、同じくらいの年齢だった時の自分とで比較してみたら、それほど違いはないのかも知れません。

「いや、そんなことはない。私は最初からやる気満々だった、自主的で主体的で当事者意識もあって、何でもしっかりやっていたぞ・・・。今の若いのと比べれば」と思うかも知れないし、実際にそうだったという方もいらっしゃるでしょうけれど、私自身は、「自分だって大したことなかった。たぶん先輩から見たら”ダメダメ”後輩だったし、”何が得意なんだかわからない””得意分野を作れるのかこの人は”と心配されていたに違いない」と思うのでした。

後輩に「言葉にしてごらん」という前に、自分が後輩に自分の想いを「言葉にして伝える」ことも大切ですよね。先輩の言葉から後輩は、「そういう考えを言葉にする意味」を学ぶ部分もあると思うから。

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