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新聞販売店、梱包資材メーカー、印刷会社に、緊急のお願い。変わる、食品選びの基準(後)。 ~日用品公害・香害(n)~

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2019年、食品移香事情を調べるため、お取り寄せを敢行。2023年~2024年、候補を一部変更のうえ再度敢行。無移香の安全な食品はいくつかあり、前回紹介しました。
しかし、かなりの割合で、厳しい現実を突きつけられる結果となっています。
洗濯用品(高残香性柔軟剤・抗菌系合成洗剤)からの、食品包装ひいては食品への移香が、これまで見られなかった地域にも拡大しています。
この国の食は、緊急事態です。

大至急、お願いしたいこと

次の業種の方々に、緊急のお願いがあります。

・新聞社、新聞・折り込み広告の印刷会社、新聞販売店
・梱包資材メーカー
・印刷会社

スタッフに対し、使用する日用品を、フレグランス・フリーのものに置き換えるよう、事業者として、強く要請していただけませんでしょうか。具体的には、家庭内で使用する製品を、移香可能性のない、できるだけ安全な製品に置き換えるための、啓発です。
また、事業所内で使用する製品についても、安全な代替品を導入していただけませんでしょうか。
この2点を、強く、希望します。
※ フレグランス・フリーの製品のリストは、「X」上で流通しています。コスパは変わらないか、むしろ安価で使いやすい製品が多数あります。

フレグランス・フリーへの置き換えの対象となるのは、次のような製品です。

高残香性柔軟剤・抗菌系合成洗剤
香水・コロン・香料入りローション・ヘアケア用品・デオドラント製品・芳香剤・香り付き床ワックス・線香・防虫剤・除菌スプレー・室内消臭芳香剤・トイレ用消臭芳香剤
および、それらに類する製品
(※ 米国カリフォルニア州公衆衛生局「フレグランスフリー・ポリシーのひな型」を参照して、各事業所で検討してください)

このうち、移香可能性のきわめて高いのが、洗濯用品(高残香性柔軟剤・抗菌系合成洗剤)です。

家庭内で使う製品については、事業所が口出しすべきではないという意見もあるでしょう。製品による影響が、家庭内で完結する場合は、もちろんそうです。しかし、近年の製品の影響は、家庭内で完結していません。

衣類に付着した物質が、行く先々で飛散し、自然分解せず、付近にあるヒトやモノに付着するという、「n次移香」が発生しています。雇用側にも、一定の責任はあるのではないでしょうか。

なぜ、こうした対策がもとめられるのか、理由を以下に述べます。

いま、この国の食品に起こっていること

原因のひとつは、以下のものが移香していることによる、二次移香です。
・緩衝材として使用した、新聞紙、エアクッション(下図、新聞紙はイメージ図)
・食材の包装に使われる、新聞紙
・ガラス瓶やペットボトルで口に貼られた、紙の開封シール
・包装に貼られた、商品名や仕様を記載した、紙のシール
・同梱のしおり、包装紙など、紙類

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紙は多孔質で、ニオイのある有害物質を吸着しやすいため、とくに注意が必要です。

新聞紙は包装用途ではありませんが、リユースはSDGs。慣行として使われている以上、無移香であるべきではないでしょうか。また、これらの移香する製品による化学物質過敏症の発症者が増えていることから、読者世帯の健康のためにも、無移香で配達する必要があると考えます。(ちなみに、筆者の居住地域の愛媛新聞は、無移香です)

商品名や内容量や期限を記載した紙のシール、同梱のしおりが移香している場合、それらから、包装へ2次移香しているケースが複数ありました。包装に直接、印刷しているものについては、移香は見られませんでした。

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包装への移香が強力であれば、缶とレトルトパック以外では、包装を貫通して、中の食品へも移る可能性があります。実際、食品まで移香している商品が複数ありました。そのうち1点は、商品のほぼ中心部まで移香が到達、飲食可能な部分を取り出せず、全廃棄となりました。

食材の生産・加工・販売では、山間部に立地する事業者が少なくありません。そこでは、多くの高齢者が働いています。高齢になると、視力や聴力が弱まるのと同様、嗅覚も弱まり、ニオイで移香に気付くことが難しくなります。そのため、移香したシールを貼ってしまったり、移香した新聞紙を緩衝材として使ってしまう可能性が高まります。この問題は、移香していない印刷物や新聞紙を使えば、解決できます。

緩衝材への移香が避けられないわけではありません。たとえば、前回紹介した、「株式会社マエダ和作屋」では、複数回取り寄せた商品がすべて無移香、エアクッションも無香でした。

ネット通販の場合、同便の他の移香貨物からの、段ボールを貫通しての2次移香が発生する可能性があります。これは、宅配便を利用する不特定多数の問題に拡大するため、今回のお願いには含めていません。

商品の販売店へのお願い

商品の生産から配達まで、どの工程で移香するかはわかりません。完全に防ぐことは困難です。しかし、商品を、移香の可能性をできるだけ排除して、そのままの状態で購入者に届ける、という姿勢が必要ではないでしょうか。

まず、スタッフ全員に、フレグランス・フリーを徹底していただけませんか。梱包担当者や、伝票を扱う事務担当者が、高残香性柔軟剤・抗菌系合成洗剤を使っていると、移香していない商品が、移香した状態で購入者に届くことになります。

パプアニューギニア海産」という企業が、「X」上で話題になっています。同社の取り組みが参考になるとおもいます。

さらに、商品を扱う場所に出入りする外注業者や来訪者に、フレグランス・フリーを啓発していただけませんでしょうか。
5省庁による啓発ポスターや、各自治体がウェブに掲載しているポスターを印刷して配布できます。(愛媛県の例:県のポスター松山市のポスター
観光農園や醸造所のように、不要な化学物質が入り込めば、除去が不可能となる事業では、商品の品質を維持するために、強力に啓発していく必要があるでしょう。

なお、この2~3カ月で、複数メーカーの市販のポリ袋が、急速に移香し始めています。複数商品をまとめて梱包する際に、使用するポリ袋についても、嗅覚でのチェックをおすすめします。

食材の生産場は、水や空気のきれいな場所にあることが多いものです。自治体が水質維持に乗り出しているケースもあります。水や空気は循環します。地域住民にも、フレグランス・フリーで環境を維持する姿勢がもとめられるでしょう。

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なお、これらの移香の可否と、程度、到達範囲は、筆者の嗅覚のみを基準に確認、判断しています。
データがなければ、事実ではない、移香など起こるはずがない、と考えられる方は、洗濯により、衣類に残った香料や抗菌成分、その物質が、その後どうなるのか想像してみてください。
衣類を着用した使用者の鼻孔にすべて吸い込まれるわけではないでしょう。周りの人も吸い込みます。そして、残りは環境中に拡散します。ただちに全て生分解するのでない以上、付近のものに付着します。
それでもなお、エビデンスがなければ、事実ではないとおもわれる方は、ご自身で、測定機器をレンタルして調査されるようお勧めします。

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