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ブランドを守れ。食品移香への取り組みに向けて。 ~日用品公害・香害(n)~

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「日用品公害・香害(n)食品移香。パッケージへの移香について問い合わせた件。(2022/11/15)」に書いたとおり、洗濯した衣類から拡散する化学物質が、食品パッケージの表面に付着することがある。パッケージの素材によっては、貫通してしまう。食品製造業界は、この「食品移香」問題を注視している。

しかしながら、食品移香を完全に防ぐことは、不可能に近い。生産者や製造業者や宅配業者が万全の体制を築いたとしてもだ。たとえば、積み荷の中に「香害」製品ユーザーの発送した荷物が1個でもあれば、他の荷物に3次移香する可能性がある。

11月下旬、愛媛県産品とおぼしき商品に、移香を感知したという情報が、筆者のもとに寄せられた。購入者によれば、段ボールへの移香が貫通して商品に付着したらしい。どうやら、配送中の移香のようである。
生産者の責任ではないとはいえ、商品の到着を楽しみに待っていた購入者にとっては、悪夢でしかない。

そこで、県のブランド推進課に対し、注意喚起をうながすメールを送ってみた。その内容をお伝えする。

愛媛県担当課へ商品移香を連絡(2022/11/30)

以前、アットマークアイティの愛媛県移住促進連載記事で、お世話になりました、薬師寺です。その節はありがとうございました。

さて、今回は別件です。
県産ブランド品への、柔軟剤臭の「移香」問題について、お知らせとお願いがございます。

先日、あるショップで購入した商品に柔軟剤の移香がみられる、という情報が寄せられました。

もし、この商品が、複数の他県でも多く生産しているものであれば、疑いは分散されるでしょう。
しかし、この商品は、当県のブランド品です。商品自体に問題がなくとも、その評価に傷がつきかねません。そこで、ブランド戦略課にお知らせするのが妥当と判断いたしました。

今回はどうやら、配送中の移香の可能性が高いようです。

しかし、それ以外にも、移香する工程はいくつもあります。たとえば、次のようなケースが考えられます。
1つだけが原因の場合もあれば、併発する可能性もあります。移香した工程の特定には難しいものがあります。

  • 柔軟剤を使って洗った作業着で、生産物を扱った。
  • 柔軟剤を使って洗った作業着で、箱詰め作業を行った。
  • 柔軟剤を使って洗った衣類を着用した来訪者が、生産・加工・梱包の現場に滞在したため、2次移香した。
  • 段ボールや緩衝材が納品された時点で移香していた。
  • 箱の中に同梱した紙類(納品書やパンフレットや商品名シールなど)が移香していた。
  • 配送業者の使った柔軟剤が、配送用段ボールを貫通して、商品の表面に移香した。
  • 同じ便に、表面の移香した荷物が積載されていた。

移香の原因となる日用品の特定も難しいでしょう。複数の日用品メーカーから、新製品が短期サイクルで発売されています。

ただし、原因となる日用品の候補は分かっています。次のとおりです。
まず、高残香性柔軟剤・柔軟剤入り合成洗剤・抗菌系合成洗剤です。
また、「特定の化学物質のみ」無添加であるにもかかわらず、「無添加」を標ぼうしている製品も該当する可能性があります。
このうち、とくに注意すべきは、抗菌系合成洗剤です。柔軟剤の香料を感知する人でも、抗菌臭を感知しない人が少なくありません。そのため、無臭と判断して使っているケースがあるからです。

当県の商品においては、少なくとも4年前までは、このような移香はありませんでした。
ところが、マイクロカプセルとナノテクノロジーを適用した日用品の消費が拡大して以降、頻発するようになっています。
PM2.5サイズ、砕ければナノサイズですから、小さな隙間から入り込みます。
また、衣類に香料等を固着させる機能があるため、移香すると除去は困難です。
「移香は起こりうる」ということを前提として、対応すべきと考えます。

オープンなSNSでは、迅速な対応が、ボヤからの炎上を防ぐ最大の防御です。購入者の残念な気持ちもわかるだけに、ただちに謝罪のリプを付けておきました。
ただし、今後、同様の情報が発信される可能性には高いものがあります。日用品に含まれる香料の強さは、ユーザーのニーズに応えるかたちで、エスカレートしているからです。
稀の1件2件ならともかく、同様の情報が増えてくると、一愛媛県民にすぎない私では対応困難です。

この後の対応は、自治体のほうで、お願いできませんでしょうか。

大手ネットショップの対応には、見習うべきものがあります。たとえば、amazonの場合、返品理由の選択肢に「ニオイ」はありませんので、カスタマーサポート担当者がtwitterを巡回して、移香を訴える声にリプを付けています。

しかしながら、移香の証明は、ユーザーの嗅覚頼みで、数値化できません。ユーザーの多くは悪臭の測定器を持っていません。また、ヒトの嗅覚の方が測定器よりも鋭敏です。
客観的な指標がない以上、今後、クレーマーが現れる可能性も否定できません。人数が増えれば、風評被害の恐れもあります。 これに対抗するには、無香害の姿勢を打ち出しておくのが有効です。
amazonは、自社ブランドで、環境配慮の洗剤販売に乗り出しています。

当県でも、先手を打って、無香害の姿勢を打ち出しておいた方がよいと考えます。
具体的には、たとえば、次のようなことが考えられます。

  1. twitterを定期的に巡回し、移香を訴えるツイには、個別にリプを付ける、あるいは、DMでサポートする。
  2. twitter内に「食品移香」相談窓口のアカウントを設け、情報を集約する。
  3. 生産や販売や配達に関わる県民に対して、「香害」の啓発活動を行う。(柔軟剤香料だけでなく、抗菌系洗剤についても)
  4. 自治体(県、市町村)は、フレグランスフリー・ポリシーを策定する。
  5. 生産者団体は、フレグランスフリー・ポリシーを宣言し、ウェブサイト等で公開する。
  6. 公共機関・医療・介護に従事する職員に対し、高残香性柔軟剤・柔軟剤入り合成洗剤・抗菌系合成洗剤の使用禁止を促す。人から人、そこから商品への、n次移香を防ぐ。
  7. 「えひめA1」「えひめA2」を、みきゃんパッケージで商品化して、amazon等で買いやすくする。
  8. 県民に対し、生体リスクと環境リスクの低い、安全な製品を推奨する。広報やウェブサイトで周知を試みる。
  9. 愛媛県として「環境先進県えひめ」を、メディアを利用して、対外的に強くアピールする。

このような移香問題は、食材にとどまりません。食品加工業界は、移香を大きな課題と捉えており、検討を進めているそうです。問い合わせた経緯については、こちらのブログにまとめています。
食品移香。パッケージへの移香について問い合わせた件。 ~日用品公害・香害(n)~

フレグランスフリー・ポリシーについては、松山市の友好都市である米国サクラメント市に立地する、カリフォルニア州公衆衛生局のひな型が参考になります。こちらに拙訳を置いています。
喘息予防のための「フレグランスフリー・ポリシー」テンプレート ~日用品公害・香害(n)~

なお、柔軟剤等の香料マイクロカプセルは、下水処理場で処理しきれず海洋へ流出します。すでに、シジミから香料が検出されているという、東京大学と愛媛大学による科研費研究もあります。比較的早い段階で、海産物に問題の生じる恐れが濃厚です。この問題につきましては、8月に、愛媛県県民環境部環境局に相談し、真摯なご回答をいただいております。
豊かな瀬戸内海を未来へ。環境先進県・愛媛の海を守れ! ~日用品公害・香害(n)~

海産物・農作物とも、安全・安心・無香害を打ち出すことができれば、より強固なブランド戦略になるのではないでしょうか。

一県民として、誇れるブランド品の評価が、日用品によって棄損される事実には、悲しいものがあります。
善後策と今後の対応につきまして、ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
長文、失礼いたしました。


愛媛県の商品移香対策(2022/12/1)

翌日、愛媛県農林水産部ブランド戦略課より返信があった。移香の防止に向け、筆者が問い合わせた内容を、関係各所に伝えたとのこと。
ただし、本ブログでの具体的な対策の公開は見合わせることになった。生産者や製造業者が、完璧な移香対策をとっていたとしても、発生を完全に防ぐことは難しいからである。

全国の皆さん、愛媛県は、真摯に取り組んでいます。こたつみかんの美味しい季節です。ほかにも、多くの美味しい柑橘があります。お正月には、愛媛県の農作物を、そして海の幸を、是非もとめて、味わってみてください。

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