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大企業とベンチャー企業のソーシャルラーニング導入事例〜ソーシャルラーニング・ラボでの気付き〜

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先週の金曜日、ソーシャルラーニングで有名なキャスタリア株式会社主催のソーシャルラーニング・ラボというイベントに参加してきました!今回はそこで学んだこと・得たものを紹介して、ソーシャルラーニング理解のtipsになるようまとめました。当日のハッシュタグ#slearnjpのtogetterへのリンクはこちらです。記事内でもご意見を拝借させて頂きました。     大企業でのソーシャルラーニング導入事例 日本IBMの前川さん曰く、"社員の持つナレッジやスキルの総和こそが会社の競争力であり、それを顧客へ提供し価値向上につなげる仕組みこそが、ソーシャルラーニングである”とのこと。

IBMは世界に40万人の社員がおり、その全てのナレッジを管理することは大変そうですが、社内では出来る限りアーカイブとして残そうという動きがあるそうです。そもそもIBMのワークスタイルは所属組織はあるものの、基本はすべてプロジェクトベース。日々のコミュニケーションはプロジェクトメンバーと。上司と会うのは月1回あるかないか。オフィスもフリーアドレス(出社義務がないことも多い)で社員の1/5の席数だそうです。こういう状況だと、よりオンラインでの共有が重要になってくるのでしょうね。しかし日本IBMも意外とノマド的な働き方をされてるんですね。三種の神器「PC」「モバイルルーター」「ガラケー」そして、真っ黒なスーツだそうです笑

大手企業、それも日本IBMともなるとかなりの規模なので全ての知識を記録しておくことは大変でしょうが、ソーシャルラーニングを使って出来るだけ会社の資産として残していくという姿勢は日本の企業も学ぶ所があるんじゃないでしょうか。

 
以下、IBMさんについて面白いtipsをtogetterから持ってきました。

"コンサルティングのあり方も変化し、昔はベストプラクティスを使い、生産性をより高めることが求められた。今では、新たな価値を常に創造する。なので、「ファイルの管理」から「人の管理」へと情報管理の方法をシフトしている"
"新たな価値を創造するには、ファイルから人へつまり社内のどこにどんなスキル、経験、知識を持った人がいて、人のつながりを管理する"
"IBM Connections という人のつながりをサポートするツールを運用している。人事情報だけでない、様々なアクティビティをタグで管理している。"
 
 
ベンチャー企業でのソーシャルラーニング導入事例
"学ぶとは、自分のネットワークの質を最適化"すること

"ここで情報の属人性"という概念が出てきます。つまり「誰が」「どんな情報を」ということが情報にプラスαで情報の価値に加わるということです。

個人的には情報には属人性を伴って価値が出るものと、属人性が薄まったゆえに情報そのものに価値が出るものと2種類あるんじゃないかなと思ってます。例えば、前者は偉人の言葉、後者は御伽噺的なものなどです。

自分が知りたい情報についてそれに答えてくれる人のネットワークを整えておくことは日常で情報を得る上で情報精度を上げるために役立ちます。
 
"代理学習"という概念
代理学習とは、「何かについて知りたい、調べる時間がない。そういう時に誰かに振ってやってもらって学習する。」という概念です。

例えば、仕事をしていてある業界の事例を調べる必要がある時に、「これ誰か知ってる人教えて!」とか「この情報集められる人、いない?」と誰かに声をかけると、次に見た時には必要な情報が提供されていて、そこから効率的に学ぶということです。これを行う場として今最も身近なのは、facebookグループでのコミュニケーションでしょう。グループに投稿すると、メンバーが誰かしら反応してくれる。

キャスタリアさんでは社内のコミュニケーションを全てfacebookグループで行っているそうです。私が以前働いていたスタートアップ企業もfacebookグループでのコミュニケーションを基本としていましたが、メールでのコミュニケーションよりも余計な情報を省くことができるので気に入っていました。Facebookのコミュニケーションについて、グループのドキュメント管理と検索機能が改善されれば本当にメールでのコミュニケーションは必要なくなると思います。メールは署名なり件名なりムダな重複情報が多すぎて、どうにも得たい情報だけを得るのには不向きなんですよね…いつも目がチカチカします笑

もちろんfacebookグループも万能ではないので、キャスタリアさんもルールとして「顔と名前が一致する人しかグループに入れない」「記事をシェアする時は要約と自分の意見を入れる」「記事を読んだらいいね!で反応」など細かい配慮もされているそうです。そうすることで円滑にコミュニケーションがとれるそう。

そういう意味では、代理学習を考えると基本的に学びには常にコミュニケーションが介在していて、ソーシャルネットワークで飛躍的にコミュニケーションがスケールし始めてる状況は今後のソーシャル+学びのスケールメリットを最大化しているかなと思います。
 
 
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オピニオン:そもそもなぜ学習をソーシャルにする必要があるのか?

ソーシャルラーニングが既存の学習スタイルと比べて優れている所で思う所は3つあると思っています。
1.自分が持っていない知識・ノウハウでも誰かに聞くことができる

Yahoo!知恵袋やQuoraなどのサービスでも行われていますが、自分が知らないことを他の誰かに聞くことができるということが今まで個人簡潔していた学習スタイルとは決定的に異なります。今ではTwitterで質問したら誰かが教えてくれたりするので、分からないことを誰かに聞くということがより簡単に出来るようになってきてますね。

2.知識をストックして、必要な時に取り出せる

学習履歴はもちろん、経験から得たノウハウなどもアーカイブにして残しておく仕組みがあれば、次に同じことを学ぶ人は先人の知恵を借りてより効率的に学習することができます。

3.他の誰かとコミュニケーションをとり学習できる

「他の数名と一緒に学ぶ」あるいは「他の誰かから学ぶ」ことはソーシャルラーニングの重要な要素です。学習にありがちな"孤独"や"1人よがりな学習"もコミュニケーションをとることで解消できる可能性が高まります。さらに、リアルタイムに生まれた議論や意見をディスカッションしたりフィードバックをもらうことで、アウトプットのクオリティもより高くなるでしょう。

(こちらの記事も面白いので、参考にどうぞ:弱い絆から情報を得て、強い絆で議論を深める 人間関係をベースにしたサービスの必要性)

そして重要なのは、これらは既存の学習方法、eラーニングやリアルな場での学びと対立するものではないということです。学習するための一助となるという意味では、あくまで全て等しくただのツールです。上手く融合させていくことができれば、より良いものへ昇華させることができると考えてます。
 
 
おまけ:オフィシャルな場では人生全体の1割しか学べない
日経BPの記事で、「オフィシャルな場では人生全体の1割しか学べない」という記事があり、とても感銘を受けたので紹介しておきます。

"70/20/10の学習コンセプトというものがある。70%が実生活や仕事からの学び、20%が仲間や先輩など他者からの学び、残りの10%が公式なトレーニングであるということです。つまり、講義や研修で学ぶ内容も重要ではありますが、それが定着するのは、仕事や実生活の場であることが多い。実際には、実生活や仕事で試行錯誤しながら知ったことや、理解を深めたことがたくさんあるはず。なのに、自分が認識できていないというのは、非常にもったいないことです。こうした問題意識から、欧州でソーシャルラーニングにかかわっている人たちの間では、「自分は何を学んできたのかという履歴を、ITを使って収集し管理できるようにしよう」という動きが生まれてきています。"(記事の抜粋と要約)

これは例えば、バスケットボールのハウツー本をいくら読んでもシュートが入るようになったりドリブルが上手くなったりはしないことに似ていると思いました。自分が成長する過程で、実際にやってみるということはやっぱり必要不可欠でした。そして実際にやってみる、というフェーズにいる人が「今までに習ったことは何だったか?」などといちいち思い出しているようでは効率が下がってしまいます。

ソーシャルラーニングは学習の履歴を管理するという意味でも今後の学習をより効率的にするための一助になってくれそうです。

終わりに
まだまだソーシャルラーニングという概念自体、正直私もこれだ!と断言できるわけではありません。まだまだ新しい概念ですし、徐々に認知されているフェーズなのでこれからの使われ方次第でその解釈も変わってくるのかなと思います。今後もソーシャルラーニングの事例を引き続きチェックしていきたいと思います。


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