ザッポスは最初に、「そもそも靴はオンラインで売れるのか?」を検証した
2009年11月、アマゾン・ドットコムは約9億ドルもの大金を投じて、靴・アパレルのネット販売大手ザッポスを買収しました。
このザッポス、靴のオンライン販売立ち上げを皮切りにビジネスを始めました。
でも自分のことを考えると、そもそも靴は「履き心地」を重視したりするので、「オンラインで売るのは難しいだろう」と思いがちですよね。
その事業立ち上げの頃の様子がエリック・リース著「リーンスタートアップ」で描かれています。
まずザッポスの創設者ニック・スインマーンは、「靴をオンラインで買う顧客は存在する」と仮説を立てました。
---(以下、引用)---
スインマーンは実験からスタートすることにした。まず、靴をオンラインで買う顧客がいるという仮説をたてる。そしてその仮説を検証するため、近所の靴店に頼んで在庫品の写真を撮らせてもらった。撮った写真はウェブに掲載し、それを誰かが買ってくれたらお店の売値で買うからと言って。
このようにザッポスはごく小さくシンプルな形でスタートした。このときの目的は、靴のオンラインショッピングにおいて優れた体験のニーズが十分に存在するか否かという問いに回答を得ることだった
---(以上、引用)----
「靴のオンラインショップ」というと、「倉庫を用意して、複雑な受発注システムを構築したりしなければならないので大変だ」と思いがちです。
さらに事業立ち上げの際には、我々は市場調査に頼ったりします。
しかしスインマーンはそれらをすっ飛ばし、数日あれば作れるようなとても簡単な仕組みでサービスを提供し、「お、これは売れるぞ」と検証してみたわけですね。
実際に靴が売れたことがわかっただけでなく、様々なことを学びました。
---(以下、引用)---
ザッポスは以下のことが学べたのだ。
1.顧客の望みについて精度の高いデータが得られた。頭の中で考えただけの質問を発するのではなく、顧客が実際にどう動くのかを観察したからだ。
2.現実の顧客とやりとりする立場に自らを置き、顧客のニーズを学んだ。.........
3.顧客が予想外の動きをする場合があり、そのときザッポスは、たずねようとも思わなかった情報を入手した。たとえば顧客が靴を返品してきた場合などだ。
ザッポスが行った実験からは、十分な数の顧客が靴を買う、あるいは買わないという、明快で定量的な結果が得られた
......小さくスタートすれば、全体的なビジョンを損なうことなく、実行時の無駄を大幅に減らせる。
---(以上、引用)---
この方法論は、「リーンスタートアップ」と呼ばれる方法です。
新規事業を立ち上げる際に陥りがちな罠は、「考えすぎてしまう」ことです。しかしいくらオフィスで考え抜いても、決して正解にはなりません。
むしろザッポスのように、実際に行動して顧客に販売することで、学べることも多いのです。
顧客が洗練され、変化が激しい現代においては、「仮説を立てた上で、リアルな顧客から学ぶ」という仮説検証のプロセスが重要なことを実感します。