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麻生川静男著『本当に残酷な中国史 大著「資治通鑑」を読み解く』ー中国ビジネスに関わる人は、ご一読をお勧めします

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前職の日本IBMに勤務していた頃は、中国の人たちと一緒に仕事をする機会を多くいただきました。

深い教養を感じさせる方が多い一方で、日本人の私からするとなかなか理解できない割り切りのよさや交渉の駆け引き、相手と自分の力関係を巧みに読み取り態度を変えるしたたかさに、「とても真似できないなぁ」と感じることが多くありました。

また一方で、大紀元のような中国政府とは独立している海外の中国メディアでは、中国共産党が日本国内で報道されない様々な蛮行を行っていることも報道されています。

自分の中では、一見両極端なこれらのことは、なかなか理解できませんでした。

 

このことについて、櫻井よしこさんが週刊東洋経済2014/11/08号のコラム「オピニオン縦横無尽 深い教養と残虐さを持つ中国人 対中外交で押さえるべき基本」で、次のように書いておられます。

---(以下、引用)---

......このように素晴らしい教養人を育んだ中国には、同時に幾千万の国民を死に追いやった毛沢東のような非道の人物が少なくない。習近平体制下で進行中の数々の蛮行、徹底した言論と情報の統制、表現の自由の規制、不条理な反日など、前述の深い教養がいかにして同じ漢民族の中に存在するのか、私には理解しにくかった。

 しかし『本当に残酷な中国史 大著「資治通鑑」を読み解く』(麻生川静男、角川SSC新書)で多くの疑問が氷解した。資治通鑑は紀元前500年から紀元後1000年の約1500年の中国の歴史を、北宋の学者であり政治家だった司馬光がまとめたものだ。...

---(以上、引用)---

 

早速、『本当に残酷な中国史 大著「資治通鑑」を読み解く』(麻生川静男、角川SSC新書)を読んで、櫻井さんが「多くの疑問が氷解した」と書いておられるのと同じことを感じました。

 

本書の冒頭、著者の麻生川さんは、資治通鑑の重要さについて次のように書いておられます。

--(以下、引用)---

■私たちにとって、資治通鑑を読むというのは...(中略)...、中国の隠された政治力学を読み取るという目的がふさわしい。中国の政治や社会は表面だけをみて、近代民主主義的な価値観から判断しても正しく理解できない。中国の政治や社会を動かしている根本理念は彼らの伝統的な価値観であるのだ。

■中国の本質を知ろうと思えば、悪の面だけ見たのでは一面的すぎる。中国には善(徳・仁・義)の実現をめざし、命がけの行動を起こした人が数多く存在する。その人たちの信念の強さやしぶとさは、ある面では日本人を遥かに凌駕する。言い換えれば、日本人は善悪のレンジが狭いのに対し、中国人はとんでもない極悪人から、ウルトラ善人まで、善悪のレンジが極めて広い。中国の悪だけでなく善のパターンが、それも極端な場合も含め、全て網羅されている資治通鑑という長編ドキュメンタリーはこの意味でも中国社会の実相を知るのに非常に有益な書であるのだ。

---(以上、引用)---

本書では多くの衝撃的な記述があります。

一例を挙げると、人が人を食うケースがしばしば書かれています。そのパターンは大きく分けて5種類。①美味・珍味として食べる。  ②罰として罪人の身内を殺して食べさせる。  ③薬として食べる。  ④憎い相手を食って鬱憤をはらす。  ⑤飢饉のとき、人を食べる。

人肉を家畜の肉同様の扱いをしているケースもあります。

 

また一方で、ビジネス面では次のような記述もあります。

---(以下、引用)---

■平和な時代にこつこつと富をためていざというときに備える、というような堅実思考は中国人には希薄だ。資治通鑑を通観してみると中国はどんなに荒廃していても、30年間、大きな天災がなく平和が続くと例外なく殷富(リッチ)になっている。そうすると、これまた判で押したように決まって贅沢モードに突入していく。...(中略)....つまり、現在の中国に蔓延している贅沢は何も鄧小平が始めた「社会主義的市場経済」下の改革開放運動の結果でなく、単に昔からの伝統に忠実に従っているにすぎないのだ。「資治通鑑を読まずして中国は語れない、そして、中国人を理解することも不可能である」というのはこういったことを指す。

■中国では法律や常識は身を守る役にたたない。各人が状況を把握し、理屈は二の次として、とにかく自分で判断し、行動することが求められる。

■現在、中国には数多くの日本企業が進出しているが頻発するトラブルに苦労していると聞く。その原因を考えるに、日本流の誠心誠意が中国人にも分かってもらえるはずと楽観的に考えている節が見える。トラブルの多くは日本人には思いもつかないような中国人の策略にある。その意味で予備的にでも中国人の策略を一通りは知っておく必要があ

■策略のパターン:  ①互いの妬みや怨みを利用する  ②高位者を利用して報復する  ③味方をも欺く  ④おだてて自滅を待つ  ⑤表では友好を装い、裏では陥れる策を練る  ⑥奸計で無実の人を陥れる  ⑦面子を守るためには、不正・不義も断行する  ⑧権道──義を貫くためには汚い手段も辞さない。

---(以上、引用)---

 

当ブログでは割愛しますが、こんな中でも自分の命を顧みずに徳を重んじた人たちの話も出てきます。

 

とは言え、グローバル化が進んでこれまでの中国のやり方は国際社会で通用しなくなりつつあります。今後、中国はどうなっていくのでしょうか?

そのことを考える上で、ライフネット生命CEOの出口治明さんが、著書『仕事に効く教養としての「世界史」』で、書いておられることがヒントになりそうです。

---(以下、引用)---

少し大胆なことを言えば、中国という国は、少なくともこれまでの歴史のうえでは、じつはあまり対外的には侵略的ではないのです。朝鮮やベトナムなど、地続きのところに対しては、始皇帝の時代から自分たちの庭だと思っていますから、かなり無遠慮です。しかし中国の本来的な強さは、むしろ侵略者を全部飲み込んでしまうところにある。飲み込んで自分の腸の中で吸収してしまう強さなので、......これまた、中国史のおもしろいところです。

---(以上、引用)---

 

このように、これまで中国は、周りの文化を飲み込んでいった歴史があります。

このような歴史を踏まえると、これから数十年から数百年間のレンジで考えると、中国はグローバル社会と積極的に関わりながらも、そのエッセンスを次第に呑み込み、さらに洗練化され、強くなっていく、ということも考えられます。

 

中国ビジネスに関わる立場にある方が歴史の視点で中国を理解する上で、本書はとても役立つと思います。

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