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「バリュープロポジションが大切」...と言っても、どうやってバリュープロポジションを考える?

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ターゲットのお客様が抱えている課題やニーズに対して、競合他社が提供できない自社だけが訴求できる価値のことを、バリュープロポジションといいます。

これまで講演や研修で、このバリュープロポジションの考え方を多くの方々に説明してきましたし、著書でも書いてきました。

「バリュープロポジション」という考え方があまり一般的でなかったこともあり、多くの方々から「参考になる」という有り難いご意見をいただいています。

 

一方で、バリュープロポジションという考え方が普及していくにつれて、最近、新しいご要望をいただくようになりました。

「じゃぁ、ウチの場合、バリュープロポジションってどうやって考えればいいのだろう?」

 

実際には、自分達のバリュープロポジションは、誰も教えてくれません。自分自身で徹底的に考え抜き、答えを出すことが必要です。

しかし方法論は必要です。

そこで最近、バリュープロポジションを考えていく方法論をまとめています。

 

バリュープロポジションを作るためには、二つのことを掘り下げて考えていく必要があるのではないかな、と考えています。

■自社ならではの強みは何か?

多くの日本企業の場合、「自社ならではの強み」とは「コア技術」です。

しかし、自社の「コア技術」とは何かを意外と突きつめられていないケースは少なくありません。

たとえば富士フィルムは、2000年以降のデジカメの爆発的普及で、本業である写真フィルム市場を喪失してしまう危機に直面しました。

皆さんは「富士フィルムにとってコア技術である写真フィルムの市場がなくなると、大変だな」と思われるのではないでしょうか?

確かに富士フィルムは、当時の古森社長が「もう、数年も保たない!」「これは天命である。断固として乗り切る」とおっしゃったように、大変な状況でした。

しかしこの危機に際して、富士フィルムは自社の「コア技術」を「写真フィルム」とは考えませんでした。

実は、「写真フィルム」は製品技術なのですね。

この時、富士フィルムは自社のコア技術は6つあると考えました。

それは「有機材料」「無機材料」「薄膜技術」「光学」「画像」「メカ・エレキ」です。

この6つのコア技術があって、それまでの主力事業である写真フィルムやカメラといった製品技術に結びつけられたのですね。

そこで危機に際して、新たにこの6つのコア技術を活かせる製品分野を徹底的に検討した結果、「イメージ・プリンティング」「高機能材料」「ヘルスケア」といった新事業を展開したのです。

富士フィルムが松田聖子さんのCMで有名な化粧品事業を始めたのも、自社のコア技術を活かして、顧客が必要とする製品技術に結びつけた結果です。

このように、自社のコア技術とは何かを改めて徹底的に考えてみることが、大切なのではないかと思います。

大切なのは「コア技術と製品技術とは、異なる」という点。製品技術はコア技術をベースに顧客の課題を解決するために発展させたもの。顧客の課題が変われば、製品技術もコア技術をベースに変えるべきなのです。

 

メーカー以外でも「コア技術」に相当する「コアとなる強み」はあります。

たとえばセブンイレブンが圧倒的に強いのは、次の三つが連携しているからではないでしょうか?

・国内16000店舗からの顧客情報
・粘り強く愚直な仮説検証の実行力
・業界を超えた商品開発(チームMD)

まず自社ならではの強み=コア技術を突きつめて考えてみることが、第一歩ではないかと思います。

 

■顧客は誰か?

その上で、「自社ならではの強み」を必要とする顧客について考えていくことが必要です。

しかし、市場を過度に大きく定義し、多くの顧客に売り込んでいるケースも少なくありません。実際には課題を徹底的に見極めて、小さな市場でダントツのシェア獲得を目指した方が、市場で強みを発揮できるケースが多いのです。

また市場を絞って定義しても、必ずしも正しい顧客にアプローチできていないケースもあります。たとえば「購買金額の最小化」を常に考えている購買部門に価値を訴求しても、なかなか相手には伝わりません。本来、価値を訴求する相手は別部門にいることも多いのです。

また法人の場合、購買契約に至るまで下記プロセスを通ります。

1.課題の発見
2.解決策の特定
3.解決策の調査
4.業者に提案要請(RFP)
5.提案検討
6.提案受諾
7.契約

ここで4の「提案要請があった」段階から入っても、価格勝負になってしまいますし、成約率は低いのが現実。

1〜3の段階で入ることで、価格勝負から価値勝負にシフト出来ますし、成約率も高まります。このためには、顧客の課題に訴求できる自社ならではの強みが明確になっていて、かつ顧客の課題を把握して売ることが大切です。

 

このように考えると、バリュープロポジションを作るためには、

・自社ならではの強み(コア技術)
・顧客は誰か?

この2点を結びつけて、徹底的に考え抜くことが必要なのではないかな、と最近思っています。

お客様とも、バリュープロポジションをいかに考えていくかを、ワークショップやプロジェクトを通じて、一緒に考えていくようにしています。

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