現在のグローバル経営は、彼の地では見直されているという現実が学べる、フリーク・ヴァーミューレン著「ヤバい経営学」
フリーク・ヴァーミューレン著「ヤバい経営学」を読了しました。
最近読んだ本の中では、とても面白い本でした。
日本国内では「経営をグローバル化しなければならない」と声高に叫ばれ、「だからM&A(企業買収)だ」「リストラ断行だ」「ストックオプションだ」「株主価値最大化だ」と進めています。
しかし本書では、その効果は長期的に見ると決して上がっていないということが、実際の研究に基づいて、わかりやすく書かれています。
たとえばM&Aは、単に買収した会社を自社の一部門にするのではなく、本来は拙著「100円のコーラを1000円で売る方法3」で駒沢商会とバリューマックス社が一緒になり、大変な思いをして全く新しい新生・バリューマックス社を生み出したように、「ともに新しい会社を作り、何か新しいものを生み出す」ことが必要です。
だからM&Aは決して簡単なことではなく、実は大変なことなのですね。
本書では、実際には非常に多くの企業買収が価値を生み出していない現実が、研究結果として示されています。
巻末の訳者あとがきによると、著者のヴァーミューレン准教授(ロンドン・ビジネススクール)は、欧州の企業から引っ張りだこで、講演や企業研修、コンサルティングの予定がビッシリと詰まっており、受講した多くの人がその内容にメロメロになってしまっているそうです。
原書の出版は2010年。
既に3年前に、英国発でこのような問題提起がされ、欧州企業では見直しが始まっている、ということですね。
本書を読んで、「結局、向かうべきところは、日本企業が昔から目指してきたことだ」と思いました。
ただし、それは古い日本型経営をそのまま復活させることではなく、新しいグローバル世界の中で、本書で描かれたような欧米型グローバル経営の反省点を踏まえた、新しい日本型経営に一段階進化したものになるはずです。
ですので本書とあわせて、2008年のリーマンショックの翌年、2009年に出版された、田坂広志著「目に見えない資本主義」を併せて読むと、日本人の私たちにとって腹おちするのではないかと思います。