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一勝三敗一分けだったプロ棋士 vs.コンピュータ。写真の世界でこの30年の間に起こったことと近いことが、将棋界でも起こっているのかもしれない

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五種のコンピュータ将棋ソフトと、五人のプロ棋士が戦う第二回電王戦は、プロ棋士の一勝三敗一分けでした。

2013/4/27の日本経済新聞の記事「文化 将棋界、電脳時代の妙手は」では、プロ棋士の感想や新しい取り組みを紹介しています。

---(以下、引用)----

...既にその先を見据える棋士もいる。(人間対コンピュータという)この構図に違和感を覚えるという森内名人は「コンピュータはあくまで道具。人間とは能力も役割も異なる」と話す。

...パソコンを持ち込んだ人間同士が戦う「アドバンスドチェス」という新種の対戦も試みられている。局面の形勢判断に優れる人間と、圧倒的な量・速度の読みの能力を持つコンピュータが力を合わせることで、さらに質の高い対局を作りだそうという試みだ。

...「コンピュータに頼るなんていかがなものか」。プロアマ問わず一部に残るそんな偏見も、すぐに薄れることだろう。プロ棋士とは、将棋の真理を探究する天才たちである。探究に有効な手段があるのなら、敬遠する方が不自然だ。

---(以上、引用)----

この記事を拝読し、写真の世界でも数十年前に起こったことを思い出しました。

 

「自動露出・自動焦点」という言葉が分かる方は40代以上の方でしょうか?

長い間、カメラは基本的に露出はマニュアル、ピントも人間が合わせるのが普通でした。

私が学生の頃、自動露出カメラは既に普及していましたが、私はマニュアルで露出を決めていました。

当時は露出計を使わなくても、「この天気なら、ISO 100のフィルムだと1/60秒、F5.6」と露出が読めたものです。

またピントをすぐに合わせられることも大切なことでした。私も暇があればファインダーを覗いて被写体にピントを合わせる練習をしていました。

写真の仲間内では、この手の腕を競い合っていました。

 

その後、カメラの自動露出の精度は上がっていき、次第に自分で露出を決めることはなくなりました。

ピント合わせも、1980年代後半にミノルタαやキヤノンEOSといった本格的な自動焦点一眼カメラが登場して自動焦点の精度と速度が上がり、自分でピント合わせに手間と時間をかけることもなくなりました。

露出ミス、ピンぼけといった初歩的なミスは激減、シャッターチャンスをものにできる確率はかなり向上しました。露出とピント合わせという点では、プロに近い技術をアマチュアも手にしたわけですね。

さらに以前は銀塩リバーサルフィルムは露出がとてもシビアでした。しかしデジカメをRAWデータで撮影すれば撮影後の補正はかなり余裕を持って行えるようになりました。

露出合わせ、ピント合わせ、各種補正という面では人の手間を大幅に削減され、「よい写真を撮る」という写真を撮る目的が達成できるようになりました。

 

「いやいや、露出もピントも、人間が自分で決めることに価値がある」という考え方も、もちろんあるでしょう。

しかし、「そういうことは機械に任せて、人間はいい写真を撮ることに集中すべきだ」という考え方もあるはずです。

 

記事の中の「コンピュータはあくまで道具。人間とは能力も役割も異なる」「探究に有効な手段があるのなら、敬遠する方が不自然」という話を読み、将棋の世界でも、コンピュータと将棋ソフトの実力が上がり、これと近いことが起こっているように思いました。

 

 

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