グローバルコミュニケーションで必要なのは、どちらかに合わせるのではなく、お互いの違いを認めること
2013/4/23の日本経済新聞の連載記事「私の課長時代 富士フイルムHD社長 中嶋成博氏」は、欧米人と日本人の考え方の違いを理解する上でとても参考になりました。
中嶋社長は、国内の製造課長代理になった4ヶ月後にオランダ工場へ異動。
カラー印画紙の一貫生産が始まったものの生産が安定しないため、製造課長として立て直しを命じられました。初めての海外渡航で中嶋社長は現地作業員の指導で苦労されます。
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一方、日本人と欧州人の違いにも悩みました。トラブルが起きると、我々は応急処置を模索します。でも欧州人は「原因が分からないと対処できない」とのスタンス。そこで双方が大げんかです。
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これは、私も海外の人たちと問題解決を模索する際に実感します。
日本人は、まず目の前の具体的な問題を解決しようとします。
ご迷惑をかけている人たちへの影響を最小限にしたい思いもあるのでしょう。しかしともすると、目の前の問題を解決してしまったら、次の問題に注意が向いてしまう傾向もあります。
欧米人はすぐに問題解決に取りかかろうとしません。
そもそもなんでこのような状況が起こっているのかを考えます。そして、もしその問題がやむを得ない状況で発生しているのであれば、「それじゃぁ仕方ないね」と対応しないこともあります。
このようにして、日本人は「問題が起こっているのに対応しないのはなぜだ」、欧米人は「その場その場で対応しても真の解決はならない。無駄だ」となって、大げんかとなるのですね。
中嶋社長が素晴らしいのは、あるきっかけでそのヒントを得たことです。
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あるとき、ドイツのケルン大聖堂に赴きました。完成まで600年以上かかったという建物ですが、建造初期から完成時の全体像を考えていたそうです。これが彼らの考え方だと思いました。ワープロで表をつくる際にも、日本人は文字から、欧州人は枠から書いていました。それに気づいた後は、彼らに「まず仕事の全体はこうだ」と説明すると円滑に進みました。
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日本人の感覚からすると、完成に600年以上かけたこと、さらに建造初期から全体像があることは、想像をはるかに超えています。
例えば今デザインをしたとして、完成は2613年。はるかな未来です。
「600年」というスケールではありませんが、私もグローバル本社の人たちと戦略を考える際に、5年後・10年後にどうあるべきで、そのために今から具体的にどうすべきか、ということを一緒に考えることがよくあります。
その際に本社の人たちはかなりの手間と時間を使い、現在の問題意識が正しいかを各国の責任者に確認をします。
このように最初にコンセプトをしっかりと固める点は、確かに見習うべき点ですね。
記事の最後では、日欧双方の課長級各8名が集まり、互いの良い点と嫌な点を挙げたところ嫌な点が山のように出てきて、「これではかみ合うわけがない」とお互いに大笑いして、互いを認める空気が生まれた様子を描いています。
これこそがあるべき姿ではないでしょうか?
グローバルコミュニケーションでは、どちらか一方に無理矢理合わせるのではなく、お互いの違いを認めた上で、両者の良さを活かし合って協業することで大きな価値を生み出すということが分かる良記事でした。