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田中陽著「セブン・イレブン 終わりなき革新」は、真の顧客中心主義とは何かを教えてくれる

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アマゾンはホームページで「世界で最も顧客重視のストアであることを目指します」と宣言し、この目標を目指して日々実践しています。

 

しかし実は、私たちのすぐ身近にも、まさにそういう日本企業があります。

それは、セブン・イレブン。

 

セブン・イレブンについては様々な本が出版されています。私はそれら全てを読んでいませんが、この本はオススメできます。

田中陽著「セブン・イレブン 終わりなき革新」

 

田中さんは日本経済新聞の記者として、長年セブン・イレブンを担当なさってこられました。恐らくメディア関係者の中でも、最もセブン・イレブンのことをご存じの方なのではないでしょうか?

2006年には、本書の前身となる「セブン-イレブン 覇者の奥義」という本も出版されています。

私もブログで前著を紹介させていただきました。→こちら

 

新たに6年ぶりに書き下ろした本書「セブン・イレブン 終わりなき革新」では、前著同様、セブン・イレブンへの膨大な取材の蓄積を元に、最新事例を取り込んで書かれています。

 

たとえば、冒頭の「はじめに」で出てくるおにぎりの話。

セブン・イレブンの「塩むすび」をご存じの方も多いかと思います。具は何一つ入っておらず、塩味だけ。

実は塩水でご飯を炊いても、決して美味しくはなりません。

真水でご飯を炊き、ほぐして、おひつに移して、団扇で扇いでゆっくり温度を下げ、手のひらに塩をつけてふっくらと握ることで、初めて美味しい塩むすびができます。

これを大量生産で作るのはものすごく難しいのですが、セブン・イレブンは作り方を根本的に改め、かつ美味しさを数値化してコントロールし、塩むすびを作ってしまいました。

この文章を読んで私はセブン・イレブンで初めて塩むすびを買ってみましたが、ものすごく美味しく感じました。確かに看板商品になる訳ですね。他のおむすびも、他コンビニのおにぎりと比べると明らかに美味しいものでした。

 

この本では、そのような事例が沢山でてきます。

たとえば、24時間営業を開始した頃の話。

本書では、米国セブン・イレブン(サウスランド社)のデータで、深夜営業をすると日中の売上も上昇する結果を知りました。24時間営業だと消費者がいつでも開いていると安心感を抱き、ロイヤルティが高まるからです。

しかし仮説検証がDNAに染みこんでいるセブン・イレブンは、これを日本で検証しました。

---(以下、p.50より引用)---

...そこで幹部は、必ずしも肥沃な消費地ではない地方の、しかも夜になると夏でも肌寒くなるような場所で実験を行うことにした。....条件が悪いところで仮説が検証され、売上が伸びれば、どこでも24時間営業が成り立つと考えたからだ。

.....結果は大成功。平均日販は16時間営業(午前7時から午後11時)で約36万円だったが、24時間営業になると59万円近くまで、約63%も跳ね上がった。一日あたりの来店数も700人強から1200人近くまで、6割強増えた。

---(以上、引用)---

他にも東京下町や神奈川県郊外でも同じ結果が出たため、「日本でも24時間営業が成功する」と判断しました。

実は、16時間営業でも24時間営業でも、冷凍や冷蔵は必要なので、電気代は変わりませんでした。必要なのは8時間分の人件費だけ。

顧客の利便性は向上し、利益水準も高まって投資回収が早くなり、加盟店にとっても大きなメリットになりました。さらに客の少ない深夜に店内掃除や商品補充作業を行えば、日中の作業が軽減され、接客業務に集中できる利点もありました。

 

また、日清食品と一緒に開発した、特定のラーメン店の味を再現したカップ麺の事例も出てきます。その開発努力も素晴らしいものですが、私が「なるほど」と思ったのはその価格付けです。以下、引用します。

---(以下、p.100より引用 )---

もし、メーカーが独自にカップ麺の商品開発をしていたら、市場実勢価格である120-150円の範囲内で商品化しようとするはずである。...どうしてもコスト制約を受ける中での商品開発になってしまう。これに対し、セブン・イレブンとチームマーチャンダイジング(MD)を組んだラーメンの商品開発はまず、「味、おいしさ」を追求する品質の面からスタートしている。消費者は価格よりも「どうしても食べてみたい」と思う商品に価値を見いだしているはず、と考えたからだった。

.....取引先の力と「セブン・イレブン」の店舗から吸い上げられる購買データを生かしたチームMDは、消費者が本当に望む商品開発に取り組んでいるのである。

---(以上、引用)---

まさに事実データを元に、愚直に消費者が望む商品を考え抜いて提供していること、そして消費者ニーズを確実に捉えれば、必ずしも価格勝負でなくても成功することが、よく分かります。

 

本書では、このような事例が至るところに出てきます。

本書は流通業にかかわる方々にとってはまさにバイブルであり、流通業に関わっていない方にとっても「真の顧客主義とは何か」を教えてくれる本であると思います。

 

 

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