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「ダントツ経営―コマツが目指す『日本国籍グローバル企業』」...高付加価値で勝負するために

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コマツの坂根政弘会長がお書きになった「ダントツ経営―コマツが目指す『日本国籍グローバル企業』」を読んでいます。

経営の現場で研ぎ澄まされた人にしかかけないメッセージの数々、まさに冒頭で書いておられる「知行合一」の世界、大変勉強になりました。

 

本書では、コマツの建設機械に標準装備されている「コムトラックス」について書いている部分があります。GPS、エンジンコントローラー、ポンプコントローラー等から集めた情報を、通信機能を使ってコマツのデータセンターに送る仕組みです。

これにより、納品後も建設機械がどこにあって何時間稼働しているか、燃料の残りがどの程度か、ということをお客さんや代理店と共有できます。

 

当初、このコムトラックスは15万円のオプション装備でした。しかし坂根会長が2001年に社長就任の際、「利益率が多少悪くなっても目をつぶるから、コマツの負担でコムトラックスを標準装備にしよう」と決断しました。

このシステムを使えば、建設機械の稼働状況等、これまで見えなかったものが「見える化」できます。「お客様のため」ではなく「われわれメーカーのため」と割り切ったとのことです。

 

実際に2004年の金融引き締めで中国市場が大きく落ち込んだとき、コムトラックスで中国全土の建設機械が動いていない異常事態を事前に把握して先んじて対策を打ち中国の工場を3ヶ月間ストップする決断をし、浅い傷で済んだこともあったそうです。今や全世界で20万台が稼働しており、それらの情報が全て見える化されています。

 

またユーザーにとっても大きなメリットがあります。建設機械のオーナーが携帯電話で自分が所有する車両の稼働状況や燃料残量がその場で見ることができます。例えば20台所有して10台がそういうことができれば、残り10台もコマツに切り換えよう、という話しになります。

 

まさに本書のタイトル「ダントツ経営」の通り、他社がやらないことをやり、高付加価値化で勝負する真髄が書かれています。

「『差別化』と言っても、どう差別化すればいいのかわからない」とお悩みの方は、ぜひご一読をお勧めします。

 

 

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