10年前の「地球シュミレータ」を、一企業が導入する時代
Wikipediaによると、科学技術庁(当時)が600億円を投資してスーパーコンピュータ「地球シュミレータ」を開発し、運用を開始したのは2002年。当時の年間保守料は50億円。
海洋研究開発機構によると、地球全体を3.5Km四方に区切って全球雲解像大気モデルを開発しました。
年間50億円を負担できる企業は滅多にありません。
もし当時、「地球シュミレータと同等システムを、当社でも導入して、新規ビジネスを始めよう」と考えたら、それは非現実的な夢物語だったかもしれません。
それからコンピュータの性能はハード・ソフト両面で著しく向上し、10年が経ちました。
EUは2020年までに全エネルギーの20%を再生エネルギーでまかなおうとしています。風力発電はその中心です。
そこでデンマークの電力会社Vestas Wind Systems社(以下、Vestas社)では、さらに高度なシステムを一企業で使用しています。
Vestas社は顧客の風力発電導入を支援していますが、風力発電を導入するユーザーは、風力発電を導入する前に投資対効果(ROI)を見極めたいと考えています。実は風力発電は必ずしも風が強ければよい訳ではなく、発電効率を高めるには微妙な条件があります。ですので設置場所によって発電効率は大きく変わります。
そこでVestas社では、地球規模の天気予報、潮汐、地理空間データ、センサー・データ、衛星写真、森林伐採マップ、気象情報のモデルをはじめとする、数ペタバイトにおよぶ構造化データおよび非構造化データを解析し、最適な設置場所を特定しています。
さらに今後は、風力タービンの稼働状況をリアルタイムに監視し、そこから生まれる膨大なデータを分析し、保守することも検討しています。
これを可能にしているのが、ビッグデータ技術です。
Vestras社R&D部門の副社長のインタビューが下記でご覧になれます。
たまたまある講演で、お客様にこの事例をお話しさせていただく機会があったので、ご紹介させていただきました。
ビッグデータ技術を使うことで、今まで不可能と思っていたことが可能になります。
しかし技術そのものが価値なのではありません。
必要なのは、どのような課題をどのような技術を使って解決しどのような価値を生み出すのか、最初の段階で明確にした上で、ある程度のリスクを許容して取り組むことなのでしょう。